先日、雑誌の取材で、カジュアルファンションの販売で急成長を遂げている某社の人事部長に話しを聞く機会がありました。同部長によると、同社では1年間に新卒採用で6万人、中途採用で1万人からの応募を受け付けているそうです。
同社では、今年1月から、新卒に関してはすべてインターネットのwebサイトでの応募に切り替えました。並行して、中途採用についても業務のIT化を進めていますが、こちらのほうは、当面、履歴書の郵送による応募にも対処する方針としています。
同社に限らず、人材採用をweb上で行う企業は急速に増加してきました。リクルートが97年に実施した「採用とインターネットの活用に関する調査」では、インターネットを利用して社員採用を行っている割合は、新卒で7割、中途採用でも4割ということでしたが、この数値は確実にアップしているのではないでしょうか。
ところで、このwebサイトを利用した人材採用では、応募から採用決定まで、面接の場面を除いて、Eメールでのやりとりが行われることがほとんどで、採用通知もメールで伝えられることが多いようです。このため、メールで届いた採用通知を果たして信用していいものかどうか、心配する声も聞かれます。
しかし、「契約」について規定している民法では、契約の成立は必ずしも文書を交わすことはを条件とはしていません。いいかえれば、口約束でも契約は成立するということです。これまでも、面接が終了した段階で、相手の面接官から口頭で「採用します」と意思表意されることはありましたし、後日、電話で採用通知が行われることもありました。これらもすべて、採用通知としては有効とされてきましたので、Eメールも当然、これと同等の扱いがなされることになります。それでもなお、証拠として不安というなら、そのメールをプリントアウトして、文書の形で保管しておくといいでしょう。
会社の「採用する」というEメールに応えて、あなたにそれを受諾する意思があれば、「お世話になります」といった返信を出すことになるかと思いますが、この返事にも同様の効力があります。
ただ、入社後の労働条件、待遇について説明を受けないうちに入社を決めてしまうのは危険です。労働基準法は、会社に対して社員を採用するときは、賃金や労働時間、休日休暇その他の労働条件について文書で提示することを求めています。この労働条件に関する条項はのちのち問題が生じたときに重要な証拠物件となりますので、会社に対して文書での提示を義務づけているわけです。
Eメールで労働条件を提示されただけで納得したりせず、改めて会社を訪問し、文書で提示してもらうと同時に、詳しい説明を受けることが大事です。
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