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サミット参加首脳1~カナダ・ハーパー首相(2ページ目)

サミットまであと1ヶ月あまり。福田首相やブッシュ大統領などはいいとして、意外としられていない他国の首脳たちを、その国の政治情勢も交えてお話しして行きます。第1回はカナダのハーパー首相、若き宰相です。

執筆者:辻 雅之

1ページ目 【カナダを構成する民族は何?】
2ページ目 【カナダの政治・経済の現状】
3ページ目 【ハーパー首相の人物像と政策】

カナダの憲法は1つではない?

カナダ政党勢力図
下院でのカナダ政党勢力図。2007年6月時点。
カナダの憲法は主に2つあります。というとよくわからないかもしれませんが、カナダの憲法は政治システムについて定めた1867年憲法と、人権保障を中心にした1982年憲法の2つが、ほぼ並立して存在しているのです。

1867年憲法も、1982年憲法も、イギリス議会によって制定されたものでした。そういう意味で、カナダはいまだイギリスからの関与を受け続けていたのですが、1982年憲法で憲法改正権をカナダ側が持つことが規定され、これで憲法上でも独立を得ることができました。

カナダではさらに、政治的慣習や重要な判例も憲法の一部を構成しています。このあたりは、やはりイギリスに似ているところがあります。

特に、下院の圧倒的な優越、首相任命のしくみは、もっぱら「憲法的慣習」に従うかたちになっています。上下両院の関係はイギリスでは立法化されていますが、第1党の党首が首相になるというしくみはイギリスでもやはり慣習。このあたり、イギリス政治の影響がみてとれます。

カナダの二大政党

カナダも二大政党制の国といえます。カナダの二大政党は保守党と自由党です。

保守党はかつて進歩保守党と名乗っていた頃、壊滅的な打撃をうけたことがあります。1993年の総選挙で下院議席が169から一気に2にまで落ち込んでしまったのです。カナダは純粋小選挙区制ですが、その怖さが如実に現れた形でした。

しかしその後、他党との合併などを通じて勢力を取り戻していき、2006年総選挙で124議席を獲得し第1党に返り咲き、現在のハーパー政権が生まれました。とはいえ過半数には及ばない少数与党政権です。

保守党は文字通り保守系の政党なのですが、ポピュリスト的要素も強いのが特徴です。自由党はリベラル系政党で、左派的な要素もあります。

他にも新民主党、ケベック連合があります。新民主党は左派色の強い政党です。支持率は結構あるのですが、小選挙区制ということでそれほど議席が伸びないのが悩みです。ケベック連合は文字通りケベック州を地盤とする地域政党です。

カナダの経済と外交関係

カナダとアメリカ
カナダとアメリカの信頼関係は日米の比ではない?
カナダはG7の一員であるほどの経済力を持っていますが、州の格差が大きいことが悩みの種です。

特に漁業がさかんだったニューファンドランド・ラブラドール州や、プリンスエドワード・アイランド州は、失業率が10%を超えます。一方で、農業に加え石油の産出があるアルバータ州の失業率は3%ほどです。また、ケベック州も失業率は高く、格差が指摘されています。

ちなみにハーパー首相はアルバータ州が大きな支持基盤であり、アルバータ州が生み出す豊かな富を「過剰に各州に再配分」することに否定的だといわれています。ケベックだけでなく、イギリス系がほとんどのアルバータ州もまた、州の大きな自治を要求しているのです。

カナダ経済のもう1つの特徴は、アメリカとの関係の深さです。大リーグの1つがカナダにあるくらいです。セリーヌ・ディオンはケベック出身。カナダにとってアメリカは、輸出先の8割・輸入先の5割を占める重要な経済パートナーです。

このような両国の状態は、戦争が不可能な「安全保障共同体」状態であるとされ、経済的・文化的アプローチでの平和を創造するうえで一つのモデルとなっています。

カナダは、イラク戦争に参加していません。国連決議がなかったからですが、それでも両国の関係が悪化しなかったことは、それだけお互いの信頼関係が強いということを表しているといえます。

最後のページではいよいよ、ハーパー・カナダ連邦首相についてみていくことにします。
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