(記事掲載日/2007.11.25)

今週の政治用語解説は、「ドーハ・ラウンド」についてです。たまに新聞やニュースなどでみかける言葉ですが、いったい何のことなのか重要そうなのにわからない人は多いかも? ここで基本知識を5分間で。

ドーハラウンドとは

ドーハラウンドの農業対立
かなり複雑な、ドーハラウンドにおける農業をめぐる4者の対立。
「ラウンド」とは、「多角的貿易交渉」と訳されることが多いもので、自由貿易主義を基本として、貿易についての世界ルールを各国が一堂に会していろんなことについて話し合い決定していくことをいいます。

20世紀まではGATT(貿易と関税に関する一般協定)を舞台に行われてきました。60年代の「ケネディ・ラウンド」では関税一括引き下げに成功、70年代の「東京・ラウンド」では非関税障壁撤廃のルールができ、80年代後半から90年代前半の「ウルグアイ・ラウンド」では農業の例外なき関税化、つまり農産物の輸入受け入れ原則をルール化したりしました。

1995年にWTO(世界貿易機関)ができ、ラウンドの舞台はここにうつりました。農業分野のさらなる自由化や、ウルグアイ・ラウンドで扱われたサービス貿易・知的所有権などの分野のルール整備を求めて、2001年ドーハ(カタール)で開催された第4回WTO閣僚会議でドーハ・ラウンドの開始が決定されました。

ちなみに正式名称は「ドーハ開発アジェンダ」。貿易を通じて途上国の経済開発をめざそうとすることがこのラウンドの大きな目的の1つになっています。

ドーハ・ラウンドの難航

しかし、ドーハ・ラウンドは大きく難航し、現在も終了するメドがたっていません。

2003年のWTO第5回閣僚会議(カンクン(メキシコ)会議)は、先進国と途上国との対立から交渉は決裂してしまいました。

その後、2004年2月の一般理事会で各分野交渉会合の議長を決定、3月から交渉会合が順次再開されていきました。2005年12月のWTO第6回閣僚会議(香港会議)では、2006年中に最終合意に到達することで合意、香港閣僚宣言として採択されていました。

しかし、その後農業分野の交渉は中断、その後全分野の交渉が一時中断されるなどして、結局2007年中の合意は断念せざるを得ない状況になってしまいました。

農業分野での激しい対立

ドーハ・ラウンドを難しくしている大きな原因が、農業分野での対立です。

日本を含めたG10とよばれる「食糧輸入国グループ」とEUは「市場アクセス」つまり農産物輸入のさらなる自由化に反対しています。理由は自国農業を守るためです。

一方、大農業輸出国であるアメリカや、オーストラリアなど先進農産物輸出国からなる「ケアンズ・グループ」は、「市場アクセス」の拡大に賛成しています。

ただし、アメリカは「国内支持」つまり国内農業分野への補助金削減には反対していますが、そういった制度をとっていない「ケアンズ・グループ」はむしろ補助金削減には賛成しています。子の点でこの2者は対立しています。

インドや中国、ブラジルなどG20とよばれる有力途上国グループは、「市場アクセス」つまり貿易自由化の拡大に賛成し、「国内支持」つまり補助金については撤廃を要求しています。しかし、先進国から非農産物の輸入拡大を迫られていて、強く抵抗しています。

このような複雑な利害対立の絡み合いが、ドーハ・ラウンドを難航させている大きな要因といえるでしょう。

WTOからFTAに移行する各国?

wtoとfta
もはや紛糾しっぱなしのWTOより個別締結のFTAのほうが妙味がある?
そして、ドーハ・ラウンドが難航している背景として、「機能しないWTOはもはや重視せず、個別のFTA(自由貿易交渉)を重視する」という各国の姿勢があるともいわれます。

世界各国は、EUやNAFTAのような集団的なFTA、あるいは日本がアジアやラテンアメリカ各国と個別に締結・または締結を目指しているFTAのようなもので貿易を促進しようとしている状況です。

つまり早い話FTAのほうが真剣で「WTOラウンドには期待していない」から「ラウンドは妥結しない」というわけです。

これからはFTAが主体の地域的貿易が盛んになるのか、それともWTOの世界ルールもまだまだ必要になってくるのか……ラウンド、WTOの意義が問われているところです。

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★おすすめINDEX 「国連・国際機構」

※参考書籍・サイト
GATT/WTO 体制の概要とWTO ドーハ・ラウンド農業交渉」樋口修
「凍結されたWTOドーハ・ラウンド交渉」みずほ総合研究所
財務省
経済産業省
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