政府の「公的契約」の基礎知識

入札や随意契約

入札、契約などの政府関連の契約を知る

官と業界の癒着(ゆちゃく)として指摘されることが多い政府や地方公共団体の契約の問題。競争入札・指名競争入札・随意契約・談合など、政府の「公的契約」についての基礎知識をお話ししていきます。

日本の法律は競争入札主義

競争入札の利点
政府などと契約を結ぶ権利を競争入札で決めることにより、税金がより有効に使われると考えられている。
日本では会計法という法律で、各省庁の契約は原則として「『一般競争入札』を経て行わなければならない」と規定されています。地方自治法でも、地方公共団体の契約についても一般競争入札を優先するよう規定しています。

契約には2種類あって、「国や地方公共団体が発注して民間業者がこれを請け負う」ものと反対に「国や地方公共団体が売りに出し、誰かがこれを買うもの」とがあるのですが、ここから先は前者の「国や地方公共団体が発注して民間業者がこれを請け負う発注」を中心に説明していきます。

「一般競争入札」というのは、不特定多数の業者が参加する入札方式です。最低金額を書いて入札した業者が、国または地方公共団体の発注を請け負う(落札する)ことができます。

国の場合、入札期日の前日から数えて最低10日前に官報や新聞紙、掲示といった方法により入札があることを知らせなければなりません。これを「公告」といいます。地方公共団体も、期日の規定はありませんが、やはり公告をすべきことが定められています。

もちろん、全ての業者に参加資格があるわけではなく、契約能力がない、悪質な業者と認められた場合などは参加資格が与えられないことになっています。また、参加できるかどうかを示すため、官庁側はどのようなものを発注するのかをきちんと説明した文書を用意しなければなりません。

一般競争入札のメリット

この一般競争入札方式には、3つのメリットがあるとされています。

1つ目は、われわれが納めた税金を節約して有効に使うことができるということです。競争によって少しでも使われる公金が減るわけですから、それだけ税金を有効利用することになります。

2つ目は、公正さの確保です。民間企業の間の契約においても公正さが求められるのはもちろんですが、国や地方公共団体が発注する契約であればそれはなおさらのことです。競争入札では業者がまったく相談なく、競争しながら公の場所で金額を投票して決めるわけですから、この点で公正さが確保されます。

3つ目は、業者が均等に参加できるというメリットです。古い企業も新しい企業も、企業の規模にも関係なく、契約を実行できる力さえあれば参加できます。

実際には多い「指名競争入札」

指名競争入札
日本では競争入札に参加できる業者が限られる「指名競争入札」を行うことが多い。
もっとも、日本の入札競争では必ずしもこのような入札が行われているわけではありません。よく行われているのは、国や地方公共団体が参加業者を指名し、その指名業者たちだけに入札を行わせるものです。

これを「指名競争入札」といいます。

会計法では契約の性質や目的などにより競争者が少数である場合、指名競争を行うことができるとされています。地方公共団体においては、地方自治施行令において同じような理由で指名競争が行えることになっています。

実際には、一般競争入札よりもこの指名競争入札が多く行われています。よく不祥事を起こした業者を「指名停止処分にした」、というニュースがありますが、これはこの競争入札から一定期間外すことを意味しています。

問題は、どの業者を指名するかということについて、あまり明確なルールがないことです。これは担当官の「裁量」の幅が大きくするもので、公正さに問題が生じる制度であることは否定できません。

また、入札に参加する業者が少数になるため、公共工事などの場合、指名業者が顔なじみで親しくなってしまい、いつのまにか談合が行われる……、そんなことも指摘されています。

こうした話題でよく出てくる「談合」という言葉ですが、これは何なのでしょうか?

談合のしくみと弊害

談合のしくみ
入札前に参加者たちが落札者や落札価格を決めてしまうことを「談合」という。競争入札から「競争をなくしてしまう」ものだ。
もともと談合というのは「話し合い」という意味の言葉です。しかし、いつしか別の意味で使われることが多くなってしまいました。

こういった話題で使われる「談合」とは、競争入札の前に、入札参加者たちが前もって相談し、入札価格を決定、請け負う人(落札者)も決定してしまうこと、をいいます。

こうして、「今回はA社が何千万円で落札し、次回はB社、その次はC社が落札することにしましょう」と裏でこっそり決めてしまう、これが談合です。「競争」は名ばかりで、実際には入札前からもう結果が決まっているわけなんですね。

これは、指名競争入札だからこそ発生してしまう、といえます。指名競争入札では参加者が指名により特定少数になってしまうため、お互い顔見知りになってしまいがち。そうなると競争するよりも談合してみんなで利益を確保しよう、ということになってしまうのです。

このことはまた、これは国や地方公共団体、ひいては国民・住民にとっても不利益です。競争が発生しない分、本当はもう少し安くできたはずの工事の代金が、参加業者に有利な高い価格になってしまうからです。反対にいうと、そうでないと業者にとっては談合の意味はありません。

そういう意味で談合は税金の「無駄遣い」にもつながるわけです。

「官製談合」のしくみ

官製談合のしくみ
「官のえらい人」が談合に介入し、入札を形だけのものにしてしまうものが「官製談合」。ここには当然癒着の関係が見えてとれる。
さらに、この談合にこともあろうか官庁側が入って、談合を成立させてしまうことがあります。これを「官製談合」といいます。

やり方として一般的なのは、担当官あるいはそれに近い人が談合に参加し、「今回の工事は何千万円でC社にお願いしたい。次はD社に回すのでよろしく」などといって話を持ちかけ、談合を成立させてしまうというものです。

担当官の上司がこれにからんでくることもあります。元宮崎県知事の東国原知事が当選した宮崎県などで問題になったのは、県の頂点であった前の県知事が談合に関与していたというものでした。

県知事など地位の高い人が「この工事はE社にせよ」などと言ってくることを、談合に参加している業者たちは「天の声」などと言っていたといいます。

ここまでくると税金の無駄遣いだけでなく、業者と官僚の側の癒着・汚職にまで発展してくる由々しきことです。

談合を取り締まる法律

刑法には入札妨害罪と談合罪が規定されています。入札を暴力だけでなく悪知恵を使って不公正なものにするのが入札妨害罪で、不正な利益を得るために談合することが談合罪です。

ただし両者とも罪は軽く、2年以下の懲役または50万円以下の罰金となっています。2年以下の懲役は執行猶予がつけられる罪です。

もっとも談合は競争をなくす「不当な取引」であるため、独占禁止法の取り締まり対象となります。公正取引委員会は談合業者に対して排除命令、課徴金納付命令などを発することができます。

世界的に政府調達(国や地方公共団体が発注すること)を海外業者にも開放しよう、という動きが主流であるなか、最近の公正取引委員会は談合の摘発に積極的になっているといわれています。

また、「官製談合」については2002年には「入札談合など関与行為防止法」というものが制定されました。これは「官製談合防止法」ともいわれます。談合に関与した官庁などの職員は、5年以下の懲役または250万円以下の罰金に処せられることになっています。

もっとも、「官製談合」についてはそれ以前に業者と職員(さらには知事など)との癒着の関係もあるわけで、そのなかで当然に金品の授受があれば、贈収賄罪の対象にもなるわけです(わいろをもらった場合は7年以下の懲役、贈ったほうは3年以下の懲役または250万円以下の罰金)。

ここまでは入札に絡む問題点をまとめてきました。次ページでは、不透明といわれがちな「随意契約」など、入札をしない契約についてお話ししていきましょう。