2ページ目 【両院協議会と衆議院再可決の手続き】
3ページ目 【50年行われていない衆議院再可決】
議院間の法案の送付手続き
議院間の送付手続き。通知、送付、回付、返付という用語が使われる。 |
ですからここでは衆議院・参議院という名前ではなく「A議院」「B議院」という名前でまずはみていきます。
A議院で可決された議案は、当然B議院に送られます。これを法律用語で「送付」といいます。
もっとも、いきなりA議院で否決しても、B議院に対して知らないふりはできないことになっています。そのため、このような場合、A議院はB議院に対して議案を否決したことを「通知」しなければなりません。
議案を「送付」されたB議院が審議した場合、議案に同意しても否決しても、そのことをA議院に「通知」しなくてはなりません。一方、B議院が議案に手を加え、修正した場合は、A議院に「回付」することになっています。
ただし、このときのB議員が参議院で、衆議院の議決を否決した場合は、「通知」ではなく「返付」しなければなりません。「通知」は、ただ否決しました、ということを伝えただけで、そのままになってしまうからです。衆議院に再可決の権利がある以上、議案審議はまだ終わっていないので、「返付」となるわけです。
また、前のページで「60日以内に参議院が審議を終えないとき、衆議院は再可決できる」と書きましたが、その時は、衆議院のほうから参議院へ、参議院が否決したと衆議院がみなしたことを「通知」することになっています。その場合、参議院は審議の必要がなくなるので、議案を衆議院に「返付」しなくてはなりません。
両院協議会とは
両院協議会の構成。3分の2以上の賛成で成案を議決する。 |
また、どちらかの議院が法律案について両院協議会を求めた場合、もう一方の議院は、これを拒むことができません。ただし、参議院が衆議院の修正案に同意しなかった場合の両院協議会の請求については、衆議院が拒否することができます。
両院協議会は各議院で選出された10人ずつ、計20人の議員(協議委員)で構成されます。しかし実際には、議長が指名するのが普通です。指名されるのは、可決した議院であればその議案に賛成した会派(政党)、否決した議院であればその議案に反対した会派のなかから選ばれます。
両院協議会は協議委員の中から議長を選任し(最初はくじで決める)、また両院から副議長を選任します。協議会の議事録は作られています。両院協議会は協議委員を選任した当日か翌日に開くことが慣例となっています。
ただし議案のなかの予算、条約承認、内閣総理大臣の指名については、両院協議会で何も決まらなければ衆議院の議決が国会の議決になることがわかっているので、両院協議会は形だけで終わってしまいます。
ここでは、法律案についてみていきましょう。
両院協議会の会議で作られた修正案は、出席協議委員の3分の2以上の多数で議案が議決されたとき、成案となります。この場合、両院協議会を求めた議院から審議し、可決した後もう一方の議院に送付し可決されれば、法律案は成立します。成案を議院でさらに修正することはできません。
このような例としては1994年、細川護煕内閣のときに公職選挙法改正などを含めた法律のときがあります。衆議院に小選挙区比例代表制を導入したときですね。衆議院で可決されたものの、参議院で否決されたため、両院協議会で妥協が図られ、修正案が各議院で可決、成立したのでした。
衆参両院で議決が異なったら廃案か衆議院再可決、というだけではないということですね。
衆議院再可決の手続き
参議院から否決されて回付された法律案については、衆議院がこの回付案に同意しないことを議決した後、衆議院が可決した法律案を本会議において3分の2以上の特別多数決で再可決することができます。これによって、法律案は衆議院の議決通り法律となって成立することになります。
では、両院協議会で成案が得られなかったとき、どうやって再可決するのでしょう。実は規定も先例もなく、衆議院が両院協議会を求めた場合再可決権を放棄したことになるという学説もあり、議員から質問された参議院法制局は否定も肯定もしていません。
このあたり、なにかもめる原因になるかもしれませんね。
最後に次ページでは、衆議院再可決の歴史についてお話ししていきましょう。