2ページ目 【他にもある自称ミニ国家、しかし国家になれない?】
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【国家承認とは別問題の「政府承認」とは?】
台湾問題は「政府承認」の問題
一つの国家に複数の政府があった場合、他の国はどっちの政府を「正統政府として承認するか」という問題に直面することになる。 |
つまり、中国には正統政府をなのる政府が2つあるということなのですね。北京にある「中華人民共和国政府」と、台湾を支配している「中華民国政府」とがあるということです。
1948年の内戦の末、敗れた「中華民国政府」は台湾に逃れ、ここで自分たちが「正統政府」であることを主張します。一方、勝利した共産党は北京に「中華人民共和国政府」を作り、同様の主張をします。
冷戦時代だった当時、日本やアメリカは、長い間中国の正統政府を「中華民国政府」だとしていました。共産党の「中華人民共和国政府」を敵視していたからです。
しかし、1970年代になると国際社会の風向きも変わり、多くの国が「中華人民共和国政府」を中国の正統政府であるという承認を与えます。このような承認は国家承認とは違い、「政府承認」といいます。1971年、国連でも中国の正統政府は中華人民共和国政府であるとされ、台湾の中華民国政府は追放されました。そして翌年、アメリカや日本も中華人民共和国政府の承認に踏み切ります。
こうして、台湾は「正統政府として主張してるけれど、その承認を得られていない政府」がおさめる地域となったわけです。国家として承認されていないわけではなく、現時点で台湾は国家としての承認を求めていません。
内乱・クーデターと政府承認
内乱やクーデターなどにより生まれた「新政府」を承認するかどうかというのは、なかなかナイーブな問題です。1979年、ガーナでクーデターが起こった際、イギリスによってクーデターによって樹立された新政府が承認されたとたん、新政府は旧閣僚たちを次々に処刑するということがありました。政府承認の慎重さが求められる苦い教訓です。
2001年までのアフガニスタン内戦の時も、アフガニスタンの9割を支配していたタリバン政権に対し、日本やアメリカなど国際社会の多くは政府承認を与えませんでした。
その疎外感がタリバンを一層過激化させ、世界遺産である仏像の破壊、さらにはアル・カーイダ(アルカイダ)との提携に走らせた、と主張する人もいます。
ちなみに、シーランド公国でクーデター未遂事件を起こした連中は「亡命政府」を作っているらしく、ここでも「政府承認」の問題があります(?)。亡命政府が政府承認を受けることはあります。
シーランド公国は国家としての条件を満たしているのか?
全てが「人工島」であるシーランド公国は、はたして国家としての条件を満たすことができるのか? |
モンテビデオ条約では、国家の条件として(a)永続的住民(b)領域(c)政府(d)他国と関係を持つ能力、をあげています(第1条)。シーランド公国は特に(a)(b)で問題があるように思えます。
もっとも、教会がそのまま国家となったバチカン市国に「永続的住民」などはいません。ほとんどの人が外国からやってきた聖職者であり、ここで死ぬ人はいても、生まれてくる人はいません。しかし国家として承認されているわけで、このあたりはシーランドもクリアできないことはないかもしれません。
問題は「領域」です。人工島のようなものが国家の領域として認められるのでしょうか。
国連海洋法条約では、領域になるための「島」の条件として、自然に作られたものでなければならないと定められています(121条1項)。もっとも、これはあくまで「本体の領土」とは別の領土しての島の定義だという主張があります。だいたい、この条約を作るとき、国家全てが人工島ということを想定した人はほとんどいなかったことでしょう。
さあこれからどうなるシーランド公国?
※「バチカンより小さな国家がある?」についての参考書籍・資料はこちらをごらんください。
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