(記事掲載:2007.01.11)

今年の4~5月はフランス大統領選挙。1995年から君臨してきたシラク大統領が来年の任期終了をもって退陣します。この大国フランスについての政治情勢最新基礎知識をやさしく解説します。

1ページ目 【「半大統領制」フランスの政治制度とは】
2ページ目 【左右の軸だけでは語れない、フランスの政党模様】
3ページ目 【2007年大統領選挙、有力候補と「キーワード」は?】

【「半大統領制」フランスの政治制度とは】

半大統領制フランス

ド・ゴール
フランス第5共和制の父、シャルル・ド・ゴール。(写真:アメリカ国務省サイト)
フランス革命後も立憲君主制、帝政、議院内閣制とさまざまな政治制度をとってきたフランス。現在のフランス政治体制は「第五共和制」といわれ、大統領の権限が大きく強化された政治制度となっています。

これは、議院内閣制のもと混乱(特にアルジェリア独立のときに)したフランスを立て直すため、第2次大戦でのレジスタンスの英雄、ド・ゴールによって作り出された体制です。

大統領は国民から直接選挙で選ばれます。任期は当初7年でしたが、現在は5年。首相の任命権、国民議会(下院)の解散権、法案などを国民投票に直接かける権利、非常事態での大権などを持っています。

アメリカの大統領制のようですが、下院の解散権や国民投票にかける権利などを持っている点では、アメリカ大統領よりも強力な権限をフランス大統領はもっているといえるでしょう。

しかし、首相があり、内閣(政府)があります。首相・内閣は国会の下院である国民議会からの信任を受けていなければなりません。そういった意味で、議院内閣制的な要素も強く残っています。

こうしたことから、フランスの大統領制は「半大統領制」といわれることが多いのです。

コアビタシオン

しかし、大統領選と国民議会選挙の時期は異なりますから、大統領の出身政党と国民議会での多数党が異なる可能性が、当然でてきます。しかも実際、そのようなことが過去3回ありました。

首相は国民議会の信任を得ていなくてはならない。このことから、大統領は政治を円滑にするため、国民議会の多数党から、たとえその人物が自分の政党と敵対する政党の者でも、首相に任命することを慣習的に行ってきました。

このように、大統領と首相の出身政党が異なってしまう状態を「コアビタシオン」といいます。

コアビタシオンにおいては、外交と軍事は大統領の専権事項とされますが、それ以外は首相や内閣がこれを行います。したがって、大統領の力は衰えてしまいます。

大統領選挙のしくみ

フランスの政治制度
「半大統領制」フランスの政治体制は、大統領制と議院内閣制が大統領権限優位の形で併存している。
第5共和制のもとでの大統領は、当初を除いて国民の直接選挙で決められています。

23歳から立候補できます。ただし、国会や県会、市町村長などから500人以上の署名を集め、憲法院(憲法問題を裁く裁判所)に提出しなければなりません。

それでも多くの政党が存在するフランスでは、やはり多くの人たちが立候補します。過去の大統領選挙で、いきなり過半数の得票をあげた候補はいません。

そこで、第1回投票(2007年は4月22日)での得票数上位2人を対象に、決選投票(5月6日)を行います。これによって、過半数の支持を得た大統領を選ぶ仕組みになっています。

官僚大国フランス

一部の一流大学卒業の官僚が幅を利かせ、天下りも盛ん……これは日本のことではなく、フランスの話です。フランスは官僚王国です。

日本では、どこの大学出身者でも国家公務員I種試験を合格すればエリート官僚への門戸が開かれますが、フランスでは官僚養成の大学校を出ることがエリート官僚になるための必須要件です。

特にENAという学校の卒業生は「エナルク」といわれ、エリート中のエリートとして官僚界で活躍、政界に転身する者もいます。イラク戦争に反対し有名になったド・ビルパン元外相(現在は首相)はまさに「エナルク」の代表選手です。

しかし、このような政治の仕組みが、フランス政治の硬直化を招いているのではないか、という批判があがっています。

次ページでは、フランスの政党事情についてみていくことにしましょう。