文章:辻 雅之(All About「よくわかる政治」旧ガイド)

(2006.09.21)

2006年9月に総選挙が行われ、政権交代が実現するスウェーデン。名前の割には知られていないスウェーデン政治の基礎知識について、わかりやすく解説していきます。

1ページ目 【スウェーデン政治制度の基礎知識】
2ページ目 【スウェーデン・モデルといわれる独特の労使関係】
3ページ目 【「福祉国家スウェーデン」はこの先どうなる?】

【スウェーデン政治制度の基礎知識】

スウェーデンの議会制度

スウェーデン
スウェーデン地図。かつてはバルト海に一大勢力を誇った国だが、現在は中立政策を守る。
一時はバルト海の強国として名をはせたスウェーデンですが、18世紀はじめのロシアとの北方戦争で敗れて以降は、戦争にも中立を守り、2つの世界大戦にも参戦せず、独自の政策を推進していきます。

そのスウェーデンの政治制度ですが、基本的に日本と同じ議院内閣制です。決定的に違うのは議会が一院制であるということです。20世紀に入ってからは二院制が続いていましたが、1971年に一院に統合されました。

選挙制度は完全な比例代表制度です。ただし全国単位ではなく、29の選挙区に分かれて投票されます。完全比例代表制度というとたくさんの政党が乱立するイメージが沸きがちです。たしかにスウェーデンも多党制なのですが、実質2つのグループに分かれています。

ちなみに、スウェーデンの比例代表方式の特徴は日本と違ってドント方式をとらず、修正サン・ラグ方式というものを使っています。ドント式では票の総数を1から1つずつ加えた整数で順に割っていくのに対し、修正・サンラグ方式では1.4でまず割り、さらに3、5、7と奇数で割っていくのが特徴です。

この方式は、ドント式より少数政党に有利だといわれています。

スウェーデンの国民投票制度

スウェーデンの政治の特徴として国民投票制度があります。6回の国民投票が行われています。

ただし、あくまで諮問的なもので、最終決定権は議会にあります。そのため、過去には存在意義が問われたこともありました。1994年と2003年の国民投票の結果については、議会がそれを受け入れたため、混乱はありませんでした。

制度化しているオンブズマン制度

オンブズマン制度(行政を独立な立場の人が監察する制度)がスウェーデンで始まったことはよく知られています。

オンブズマンはスウェーデン語で「代理」という意味で、始めは国王の、そして今は市民の代理人として、大きな権限を持って行政を監視しています。また、さまざまなオンブズマンが存在します。

なかでも大きな権限を持っているのが国会オンブズマンで、国会によって任命され、公務員の調査や市民からの苦情申し立てを処理したりします。任命した国会はオンブズマンになんら命令を出すことができません。

他にも消費者オンブズマン、男女機会均等オンブズマン、民族差別オンブズマン、子どもオンブズマン、障害者オンブズマンなどがいて、行政のみならず社会のさまざまな場面で監視の目を光らせています。

ユニークなところでは、1999年に設置された同性愛オンブズマンがいます。同性愛差別を監視するオンブズマンです。

スウェーデン政治を象徴する社会民主党

スウェーデン議会勢力
ここ数年のスウェーデン議会勢力。社会民主党は今回政権を譲り渡すが、それでも第一党である。その辺りも日本の自民党と似ている。
長期政権というと日本の自民党政権がその代名詞のようですが、スウェーデンでも長期政権が存在します。それが社会民主党政権です。

社会民主党は1932年から73年までと、1982年から91年、1994年から2006年まで、それぞれ政権を担当してきました。途中中断はあるものの、他の政党にくらべるとはるかに長い政権担当期間をほこっています(連立もあり)。

また、社会民主党は戦後一貫して比較第一党であり続けました。他の党の政権が連立によってようやく政権を維持してきたのに対し、社会民主党は常に安定した勢力基盤に立って政権を維持してきました。

この穏健左派政党である社会民主党政権のもとで、スウェーデンはよく知られた「福祉国家」としての成長を遂げてきたわけです。

その他のスウェーデン政党

ほかの政党の中で一番勢力が大きいのが穏健統一党(穏健党)です。典型的なブルジョワ・政党といわれます。社会民主党に対抗する「ブルジョワ・ブロック」の盟主的存在です。

中央党は農民組織を基盤とします。社会民主党と連立を組んでいたときもありましたが、現在は「ブルジョワ・ブロック」に属しています。他に自由党、キリスト教民主党も「ブルジョワ・ブロック」です。

左派の第2党が左翼党(左党とも)です。社会民主党よりは急進的です。現在は社会民主党の同盟政党です。その他、新民主党や環境党などもありますが、勢力は小さくとどまっています。

スウェーデンとEU

スウェーデンは1995年、EUに加盟しました。中立政策で知られるスウェーデンの加盟は1つのニュースでした。

このころもはやEUはヨーロッパ全体の経済政策を決定する勢いを持っていました。スウェーデンは、部外者なのにそれに翻弄されるより、積極的に参加することを選択したと考えられています(『スウェーデン現代政治史』早稲田大学出版部)

次のページではスウェーデン政治の特徴、労働組合と政治との関係についてお話していきます。