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日本の内閣のしくみ(3ページ目)

今回の「基礎からの政治講座」、内閣編の最終回として、日本の内閣のしくみについてお話していきます。内閣の仕事、内閣の権限、内閣総理大臣の権限とは。しっかり覚えておきましょう。

執筆者:辻 雅之

1ページ目 【内閣のメンバーになるには資格が必要】
2ページ目 【内閣全体で行う仕事ってどんなものがある?】
3ページ目 【内閣総理大臣の権限ってどんなものがある?】

【内閣総理大臣の権限ってどんなものがある?】

内閣総理大臣の任命まで

皇居
内閣総理大臣は任命を、その他の国務大臣は認証をそれぞれ受けるため、天皇のいる皇居に向かう。(photo(c)東京発フリー写真集
ある内閣が総辞職したら、国会は他のことがらより優先して内閣総理大臣を指名します。

内閣総理大臣の指名は衆参両方で行います。そのため、過去には衆参両院で異なる人を指名したことがありました。この場合、両院協議会を開いて衆参両院の代表が協議をします。

しかし、憲法でこの協議会が決裂した場合にはその時点で衆議院の指名が優先することになっているため、両院協議会はだいたい決裂、衆議院の指名した人が内閣総理大臣として任命されることになります。

そして内閣総理大臣は内閣の助言と承認のもと、天皇によって任命されます。……と、はて、内閣は総辞職しているのに、だれが天皇に「助言と承認」を与えるのでしょうか。

正解は「前の内閣」です。憲法で、総辞職した内閣は次の内閣総理大臣が決まるまで事務的な仕事を行うよう規定されています。これを「職務執行内閣」といいます。前の内閣の最後の仕事が、内閣総理大臣任命についての助言と承認というわけですね。

内閣総理大臣の仕事1~国務大臣の任命・罷免

国務大臣の任命と罷免は内閣総理大臣の専権事項です。天皇の認証を必要としますが儀礼的なことであり、内閣総理大臣の行為に影響はしません。

内閣総理大臣は国務大臣の人事権を一手に握ることにより、強大な力を持つことができます。ただし、内閣総理大臣が党内の事情に気を遣い、なかなかその人事権を発揮する場面はありませんでした。

そういう意味で、この人事権をフル活用し権力を増していった小泉首相の人事政策は、画期的なことだったと言えます。

内閣総理大臣の仕事2~行政各部の指揮監督

これが、実はよくわからないところです。つまり、いったいどこまでを「指揮監督」できるのか。

たとえば、内閣総理大臣がある企業からお金をもらって、ある大臣に「その企業から飛行機を買いなさい」というようなこと。これは果たして内閣総理大臣の指揮監督権を使った「収賄」にあたるのか、内閣総理大臣にはそこまで指示する権限はないから「収賄」は適用されないのか。

このことは、ロッキ-ド事件の裁判でも大きな争点になりました。

内閣法では、

内閣法第6条
内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督する。


とあるので、内閣総理大臣は内閣の意思を無視して単独で指揮監督権を発動できない、と考えるのが有力な学説となっています。

ただ、それだと内閣総理大臣の指揮監督権も狭められてしまう。そこで、内閣総理大臣のリーダーシップを発揮させるために2001年、内閣総理大臣を直接の主任大臣とする内閣府が発足しました。

内閣府設置法第4条では内閣府の業務について、「行政各部の施策の統一を図るために必要となる(中略)事項の企画及び立案並びに総合調整に関する事務」と規定してあります。

これによって、内閣総理大臣は行政各部の指揮監督権をうまく使い、省庁のタテ割りの壁を超えた政策立案と実行ができるよう期待されています。

内閣総理大臣の仕事3~閣議の主宰

内閣法ではこのように規定されていますが、実際の議事進行は内閣官房長官がおこなっているようです。

1999年の改正によって、内閣総理大臣が閣議での発議権を持つように規定されましたが、どのようにそれが使用されているかはよくわかっていません。

内閣の総辞職

内閣不信任案
内閣不信任案が可決されれば、どのみち内閣は総辞職しなければならない。総選挙で国民が内閣総理大臣を「信任」してくれればもう1度内閣を組織することができるが……
内閣は、いずれかの場合に総辞職しなくてはいけません。

・内閣総理大臣が欠けたとき
・内閣不信任案が可決されて、10日以内に衆議院を解散しない場合
・衆議院総選挙後最初の国会が召集されたとき

内閣総理大臣が「欠けた」とは、死亡や職務遂行能力の喪失などがあげられると考えられていますが、他にも柔軟に解釈すべきだという声もあります。

また、内閣不信任案可決をうけて衆議院を解散しても、いずれ最初の国会で内閣は総辞職しなければならないことになっています。衆議院総選挙は政権を選択する意味合いがあるからです。

不信任案を突き付けられても、解散総選挙すれば国民が支持し、与党の過半数の議席を獲得させてくれると思えば衆議院解散、いやちょっと無理だろう、というときには総辞職を選ぶ、というわけです。

副大臣・大臣政務官

さて、内閣のメンバーではありませんが、内閣と一体となって活動する人たちとして、副大臣と大臣政務官があります。いずれも国会議員がなるのが原則です。

副大臣は内閣が任命し天皇が認証します。大臣政務官は各省庁の主任大臣の申し出により内閣が任命することになっています。

副大臣は内閣総辞職とともに辞職することになっています。大臣政務官には特別な規定はありませんが、普通は内閣総辞職に合わせて交代することになります。

無任所大臣と特命担当大臣

なにも主任事務がない大臣を任命することは許されています。これを無任所大臣といいます。

よく○○担当大臣という言葉を目にすると思いますが、これは無任所大臣ではありません。内閣府のなかに置かれた「特命担当大臣」であり、それぞれ所轄の仕事があります。

「日本の内閣のしくみ」についての参考書籍・資料はこちらをごらんください。

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