基礎からの政治講座、今回は日本の内閣がどのような組織になっているか、具体的にみていきます。
1ページ目 【内閣のメンバーになるには資格が必要】
2ページ目 【内閣全体で行う仕事ってどんなものがある?】
3ページ目 【内閣総理大臣の権限ってどんなものがある?】
【内閣のメンバーになるには資格が必要】
内閣は1つの「合議体」
首相官邸。定例閣議は毎週火・金曜日に開催されている。非公開だが、その実態は……? |
日本国憲法第66条
内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。
2 内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。
3 内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。
このことから、内閣は1つの「合議体」であると考えられています。そのため、内閣が意思決定をするためには内閣の会議、すなわち「閣議」が必要であると考えられています。
内閣法4条1項
内閣がその職権を行うのは、閣議によるものとする。
閣議は必ず「全会一致」
法令の規定はありませんが、閣議は全会一致、つまり全てのメンバーが賛成しなければならないとされています。上記の憲法の条文にあるように、内閣には連帯性が求められているからです。多数決は行いません。しかし、どうしても反対、という大臣がいたらどうなるのでしょう。
答えは簡単な話で、内閣総理大臣が反対している大臣を即座に罷免、つまりクビにして、臨時に自分がその大臣の役職を兼任すればいいのです。
このように内閣総理大臣には大きな権限が与えられています。もっとも、この権限を実際に使えるかどうか、それはその内閣総理大臣が本当に持っている力などによるでしょう。
驚き? 閣議の実態
さて、閣議はどのように行われているのでしょう。非公開で議事録もないので、よくはわかりません。しかし、菅直人・元民主党代表が厚生大臣経験時代のことを書いた『大臣』(岩波新書)という本があります。ここに、閣議の様子を書いたシーンがあります。ちょっとだけ引用してみます。
閣議決定をするには、その案件ごとに、総理大臣以下の大臣が署名をしなければならない。そのための署名がまわってくるので、それに署名するのに忙しいのだ。(中略)すべての書類に全員の署名が終わった頃、官房長官が「これで閣議を終わります」と宣言して閣議が終了する。……この間、十分から長くても十五分。
要するに、話し合いなどは何もしていなのです。次から次へと、官庁があげてきた書類にひたすら署名。署名が全部終わったら、その件は「全会一致」。
このあと「閣僚懇談会」が開かれることもあり、ここでは自由討論が行われますが、法的な効果はありません。
ちなみに、定例閣議は火・金曜日に行われます。その前日に「事務次官等会議」が開かれ、閣議にあげる案件を省庁のトップが決定しています。
内閣構成員となるための「資格」
自衛官ではない文民が内閣を組織し、自衛隊をコントロールするという「シビリアン=コントロール」が確立している。 |
国会議員、ということなので参議院議員でも内閣総理大臣になることができます。ただし、その例はありません。内閣が内閣不信任決議を受けて衆議院を解散できることを考えると、衆議院議員が内閣総理大臣になった方が好ましいとは言えます。
その他の国務大臣は、過半数が国会議員でなければならないとされています。実際にはほとんどが国会議員です。国会議員でない人が国務大臣になるのはまれなケースです。
ちなみに、イギリスの国務大臣は全員国会議員でなければなりません。
また、内閣総理大臣と国務大臣は全員「文民」でなけらばならないとされています。文民とは、職業軍人でない人のことをいいますが、現在そういう人はいないので、現役自衛官でない人が文民、ということが有力となっています。
戦前は軍人が大臣や首相になったりしていることもありましたが、現在、自衛隊は文民の統制のもとにあることがこれではっきりしています。この原則をシビリアン=コントロール(文民統制)といいます。
★さて、次のページでは内閣の権限について、わかりやすく説明していきましょう。