(2006.05.19)

議院内閣制とは何なのか、なぜ内閣は不信任されたら議会を解散したり総辞職したりしなければならないのか。議院内閣制の基本的知識を、イギリスの歴史から日本国憲法の内容まで、やさしく解説していきます。

1ページ目 【議院内閣制をつくりあげた1人の偉大な政治家】
2ページ目 【議会による内閣不信任、内閣による議会解散の原理とは?】
3ページ目 【日本国憲法における不信任決議・解散・総辞職の制度を知ろう】

【議院内閣制をつくりあげた1人の偉大な政治家】

もともと「嫌味な意味」がある「内閣」の語源

小部屋
英語で内閣を指す「キャビネット」とはもともと「国王とこそこそ相談する小部屋」の意味で用いられたネガティブな言葉だった
もともと内閣とは、国王に助言を与える人たちのことをまとめてさした言葉でした。

イギリス最初の市民革命である17世紀前半のピューリタン(清教徒)革命は、クロムウェルの軍事独裁という結果を招いてしまいました。その結果、彼の死後に廃止されていた王政が復活、チャールズ2世という人が国王になりました。

チャールズは国王を助ける枢密院という会議のメンバーから、さらによりすぐった人に国王に助言を与える資格を非公式に与えました。このなんか隠れてこそこそ相談している嫌な感じを表した言葉が、内閣にあたる英語「(隠れた)小部屋=Cabinet」の語源です。

こうして内閣は、まずはまだ主権を持っていた国王の非公式な相談相手として作られたのでした。これがやがて制度化し、常設されるようになるのです。

議院内閣制の基礎を築いた人物

さて、イギリスは17世紀末の名誉革命により議会主義が確立。国王は次第に「君臨すれども統治せず」という状態になっていきました。

それを決定づけたのが、18世紀のジョージ1世の国王即位でした。

王室の直系が絶えてしまったため、イギリスは王室の遠縁にあたるドイツのハノーヴァー家からジョージ1世を国王として招きました。……彼はそのため、「英語がわからなかった」のです!

こうなったら、ジョージ1世は誰かに完全に政治を任せるしかありません。任されたのはやはり内閣のメンバーでした。そのなかで長くメンバーを務め、後の初代首相といわれるホイッグ党のウォルポールだったのです。

ウォルポールを中心とする時代は次の国王ジョージ2世が即位しても続きました。そんななか、総選挙でウォルポールの率いるホイッグ党が選挙で負け、議席が過半数を割るできごとが起こりました。

ウォルポールはこれをもって議会の「信任を失った」と考え、ジョージ2世が必死で慰留したにもかかわらず、内閣を去りました。

これが「内閣は議会の信任をうけて成立し、議会に責任を持つ」という議院内閣制の始まりになったのでした。この慣習を確立したウォルポールは今でもイギリスの偉大な政治家のひとりとして数えられています。

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2つの「不信任」

議院内閣制
議院内閣制は内閣が議会に対し責任を持つシステム。議会の信任を得てはじめて内閣は存在することができるといえる(Photo:(c)東京発フリー写真素材集
さて、この歴史から見えてきた議院内閣制の特徴をおさらいしてみましょう。

・内閣は、君主などではなく議会に対して責任を持つ
・内閣は、議会の信任に基づいて存在する。議会の信任を失った場合は総辞職し、別の内閣にバトンタッチしなければならない

ここで、「信任を失った=不信任」の意味が問題になります。不信任という言葉は、2つの状態を指しているのです。

(1)総選挙の結果、信任を失った

内閣を組織している政党(与党)が総選挙で敗北し、過半数を割ってしまった場合ですね。このとき、内閣は総辞職しなければならない。これが、ウォルポールが作ったルールだったのです。

このことは、イギリスでは「ルール」ですが、日本ではしっかり憲法に規定されています。後で見ていきましょう。

(2)議会から不信任決議を受けた

(1)のルールを拡張して、議会が不信任決議をしてわざわざ不信任を示した場合、やはり信任を失ったと考えるのです。

このようなケースは通常起こり得ないのですが、与党が分裂して過半数割れなどをしてしまった場合、起こることが想定されます。

二大政党制が確立しているイギリスでは与党の分裂などということはまず起こらず、内閣不信任決議が可決されることもありません。しかし、日本ではしばしば自民党が分裂して、内閣不信任案が可決されたことがありました。

議会から不信任を受けた場合の特例とは?

さて、上のうち、(1)のケースの場合は、国民から「不信任」を突き付けられたと考えられるわけですから、総辞職しなければいけないのも納得がいきます。

しかし、(2)のケースの場合はどうでしょう。 ……内閣は納得いかないかもしれません。そんな内閣に許されている対抗措置とは? 次のページで見ていきましょう。