2ページ目 【保釈についての基礎知識~保釈の条件、保釈金の決定など】
3ページ目 【「公判前整理手続」についての基礎知識~裁判は本当に迅速化されるか】
【「公判前整理手続」についての基礎知識~裁判は本当に迅速化されるか】
裁判迅速(じんそく)化のための公判前整理手続制度
公判前整理手続とは、公判開始前に、採用する証拠を決めておくことです。具体的には、(1)検察官側の訴える理由・適用しようとする罰を明らかにする
(2)公判の時に双方が主張することを明らかにする
(3)証拠請求をし、その証拠についての争点を明らかにする
(4)採用証拠を決定しておく
このようなことを行います。
これは裁判官・検察官・弁護人がともに出席して行います。この手続により、証拠と争点がほぼ確定されるため、これに基づいた迅速な公判が可能になると考えられているのです。
裁判員制度にあわせて作られた公判前整理手続制度
公判が始まってからはじめて審理をしていては、相手の手の内がわからない「ガチンコ勝負」になりしばしば裁判が遅くなる。裁判の争点を明確化することが公判前整理手続の意味 |
1つには、日本の裁判があまりに時間をかけすぎていたことへの反省です。拙速な裁判は被告人の権利を侵害しますが、かといって遅すぎる裁判は、無罪の可能性が高い被告人の権利をむしろ侵害します。
しかし、日本の刑事手続は長く、また口頭でのやり取りが原則であったり、戦術のため検察官や弁護人双方が持っている証拠を出し惜しみしたりとしたため、ずいぶん裁判自体が長くかかるものになってしまいました。
それを何とかするため、迅速化が必要だとされ、「裁判迅速化法」の制定(2003年)を経て、この手続制度が導入されました(2005年より実施)。ちなみに裁判迅速化法では、第1審の審理期間の目標を「2年」と定めています(第2条1項)。
もう1つは、2009年までには実施されることが決定している裁判員制度をにらんだものです。
裁判員制度では無作為に選ばれた20歳以上の市民(国民)が義務として裁判員になります。ただ義務とはいえ、みんな仕事などを休んで裁判所に来るわけですから、今までのようなだらだらした裁判をすることはできません。
そのため、裁判員の選定と同時にこの手続を活用して、裁判を迅速に進めようと考えて、この制度が導入されたといわれています。
なぜもっと、早くこの制度が導入されなかったのか?
「裁判官の予断排除の原則」というのが、戦後日本の刑事裁判の原則でした。つまり、裁判官が公判前から被告人についての情報を知ってしまうと、場合によっては被告人に不利な先入観、つまり「予断を抱く」ことの危険性がある……、そのため、裁判は検察官の起訴理由→弁護人の反論→検察の……という形で行われ、証拠調べはあくまで公判のなかで行われていました。
しかし、戦後60年が経過し、裁判官が予断を持ってはいけないということは裁判官自体もよく認識するようになり、無罪判決もしばしば出るようになりました。
しかし、今度は裁判員制度導入ということになるので、「裁判員の予断」が懸念されます。なにせ一般市民ですし、裁判員制度が適用される裁判はおそらくニュースになるような重大事件です。裁判員が予断を持つな、というほうが無理でしょう。
そのため、職業裁判官が公判前、検察官や弁護人と協議し、裁判のやり方をある程度きめる必要が出てきたのです。公判前整理手続は、そのためにも有効だと考えられています。
ちなみに、日本の裁判員制度が「陪審」だと、これはそれほど意味を持ちません。アメリカなどの陪審は、市民が有罪・無罪を判断、裁判官が量刑を判断と、役割が分かれているからです。
しかし、日本の裁判員制度はフランス・ドイツ型で、市民である裁判員が職業裁判官といっしょに審理を行う「参審」です。予断を持つ市民に対し、職業裁判官がアドバイスすることができるため、公判前に裁判官が調査をすることに、大きな意味が出てくるのです。
ライブドア裁判が与える影響
このサイトのユーザーさんでさえ大半が裁判員選任に及び腰だ。裁判員制度を定着させる一歩として、注目された「公判前整理手続」でどれだけ裁判が迅速になるのか、司法当事者は示す必要があるだろう |
しかし、証拠はかなり多いはずですから、これが公判前手続によってどれだけ整理され、裁判が迅速に進むか、一つの注目点です。
早く判決がおりる(または結審する)ことになれば、この制度の有効性が再認識され、裁判員制度に対する市民の「不審・不満」も少しは解消されるでしょう。しかし逆なら……
ちなみにこのサイトで行っている「あなたの一票」、裁判員法が制定された2004年6月に行った「あなたは裁判員に選ばれたい?」では、39%が「選ばれたくない」、34%が「選ばれたいが不安もある」でした。
このアンケートは無作為ではなく、ある程度意識がある人が対象だと思われますが、それでこの結果ですから、裁判員制度定着のためにも、ライブドア事件の裁判、意外と重要なものになってきそうです。
※「逮捕・保釈の基礎知識」についての参考書籍・資料はこちらをごらんください。
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