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教育基本法改正問題・一問一答(3ページ目)

教育基本法が制定からおよそ60年を経て初めて改正されようとしています。公共心を養う効果を期待する一方、「愛国心」の押し付けとの批判も強く、後半国会の山場となるでしょう。一問一答形式で。

執筆者:辻 雅之

1ページ目 【教育基本法とはどのような法律で、なにが「問題」なのか?】
2ページ目 【改正案にある公共心、そして「愛国心」とはいったいなんなのか?】
3ページ目 【避けて通れない「日の丸・君が代」についても一問一答で解説します】

【避けて通れない「日の丸・君が代」についても一問一答で解説します】

国旗・国歌はどのように制定されたのですか

いろいろな経過を経て、1999年制定の「国旗国歌法」により、「日の丸」が国旗に、「君が代」が国歌に、それぞれ規定されました。

国旗国歌法 全文
第一条  1 国旗は、日章旗とする。
2 日章旗の制式は、別記第一のとおりとする。

第二条 1 国歌は、君が代とする。
2 君が代の歌詞及び楽曲は、別記第二のとおりとする。


しかし、日の丸は昔からあったものですよね?

国旗国歌
国旗などが必要、と考えたのは明治新政府だけではない。改革派大名たちのなかにも近代国家として国旗が必要と考えていた人たち(島津斉彬ら)がいた
いつから日本のシンボルになったのかは定かでありません。鎌倉時代の絵巻などには、よく白地の扇に朱色の丸があるものをみることができます。

正式には1853年のペリー来航・開国のなかで、日本も旗が必要なのではないか、なぜなら船の区別ができなくなる、ということで、誰が日の丸を考えたのかは諸説あるのですが、1854年には「日本国船総印」として日の丸を用いることが幕府によって決定されました。

感覚的に鋭い人はこれは近代国家としての国旗である、と考えていましたし、その必要も考えていました。単なる日本船を表すものだ、と考えていた幕府の閣僚もいましたが、やがて国旗の意味で用いられるようになりました。

こうして明治維新さなかの1870年、太政官布告で日の丸は国旗として定められました。

ただ戦後はそのような法律がなかったため、(他にも理由があるのですが、それは次で)特に学校現場での日の丸掲揚をめぐってしばしば紛糾が生まれ、とうとう教育委員会と掲揚反対教師との板挟みを苦にして校長が自殺する事件が起こりました。
そこで自民党を中心に立法作業が進められ、1999年の国旗国歌法制定となったのです。

一部の人たちが日の丸に反対する理由は?

いろいろあるのですが、総じていうと、日の丸が「アジア侵略のシンボル」「天皇絶対主義の象徴」などということで、日の丸を国旗にすることはふさわしくない、ということが理由になっています。

しかし、日の丸が江戸幕府によって作られた、という経緯をもって、上記の意見に反論する人も少なくありません。日の丸と天皇うんぬんの問題とはそもそも無関係というわけです。

君が代はいつできたのですか?

明治政府になって、他の近代国家のように元首たる天皇を迎える楽曲をつくろうということで、まず『古今和歌集』のなかから歌詞が選ばれました。

そして、イギリス人フェントンに作曲を依頼しますが、フェントンが日本語を知らなかったため、歌いづらくなってしまいました。その後、宮内省の林広守が作曲し、今日に至っている、というのが通説です。初演は1879年といわれています。

その後、1893年に井上毅(こわし)文部大臣の告示で君が代が国歌として通達され、国歌として使用されるようになりました。

一部の人たちが君が代に反対する理由は?

「君」は文字通り「君主」つまり天皇のことを指すため、天皇の世(代)よ永遠に、というのは民主主義国家の国歌としてはよくないのではないか、という意味です。

これに対する反論として、「君」とは国民主権主義のことを指す、なぜなら日本国憲法で君つまり天皇は主権者である日本国民の象徴となったのだから、というものがあります。

しかし無理がない感じでもありませんし、では英国国歌の「神よ女王陛下をお守りください」というのはどうなのか、英国は日本よりはるかに民主国家ではないか、だからすなおに「君=天皇」として歌っても民主主義と矛盾しない、という意見もあります。

日の丸・君が代問題の「問題」とは?

国旗・国歌論争
国旗と国歌の論争は、実は当局と教師の権力争い? もしそうだとするなら、その挾間で争いに揉まれる子どもたちがかわいそうだ
一番よくないのが、「大人の政治的な争いを子どもたちがいる教育現場に持ち込んでいる」ことだと思われます。

つまり、国や教育委員会の本音は教師管理を徹底したい。一方、教師たちはそれに抵抗し、極端にいうと好き放題教えたい。この対立のとっかかりが「国旗・国歌」のような気がします。

たとえば東京都が「職員会議による重要事項の決定の廃止」などを打ち出し、教員が反発していますが、本音のところはこのあたりの攻防であって、それが国旗・国歌問題で象徴されているように思われます。

ほかにも、国や地方公共団体は伴奏を「ピアノ演奏」で、と言っています。そしてピアノ演奏を拒否した音楽教師を懲戒処分。CDで伴奏をすればいいのですが、それをしないというのは、教師管理の一端を国歌で行おうとする国側の意図を背後に見て取ることができます。

(最近では、国歌を歌う声の測定を行うという市町村まで、でてきています)

一方、教師の側も実にかたくなです。

「郷に入っては……」といいますが、公の場で起立と言われて起立しないのは大人としていかがなものか。たとえばキリスト教系の私立学校の教師が、イエスを賛美する賛美歌を歌うことを「仏教徒だから」と公の場で拒否していいものでしょうか。

関連業界では「教師の『常識』は世間の『非常識』」という言葉をよく耳にしますが……。

いずれにせよ、子どもたちの前でこのようなドタバタを見せてほしくない、と思ってしまいます。

「教育基本法改正問題・一問一答」についての参考書籍・資料はこちらをごらんください。

▼こちらもご参照下さい。
大人のための教科書 政治の超基礎講座

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