2ページ目 【「テロ組織」ともいわれるハマスが人々の支持を集めるのは?】
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【ハマスは、そしてイスラエル-パレスチナ問題は今後どうなる?】
なぜハマスは総選挙に参加したのですか?
パレスチナ自治政府(PA)の組織図と2006年1月初現在の勢力。 |
しかしこの年の暮れ、40年にわたって「パレスチナのカリスマ」であり続けたアラファト元議長が死に、パレスチナに権力の真空が生まれました。
ハマスは、これを利用し、パレスチナの政治をPLO=ファタハから奪おうと考えたのではないかと思われます。そのための手段として幹部が考えたのが、今まで拒否してきた暫定自治への参加、ということだったのでしょう。
もっとも、この路線転換がすぐに実現できたわけではありません。2005年初めのパレスチナ暫定政府議長選挙については、ハマスはこれをボイコットし、結果としてファタハのアッバス議長選出を許しています。
これは、ハマス内部でまだ路線転換をめぐるコンセンサスが得られてなかったことが影響していると思われます。
しかし、地方選挙から参加を始め、多くの支持を得るようになりました。そして、今回のパレスチナ評議会(事実上の国会)選挙を優勢に進め、政権奪取を可能にする議席を獲得するにいたったのです。
ハマス内閣ができると、何が起こるのでしょうか?
考えられるシナリオについて検討してみましょう。・一方的「独立宣言」の発表
これは、事実上のパレスチナ大統領であるファタハのアッバス議長が許さないでしょう。そんなことをすると、イスラエルとの和平が一層遠のく。
また、「どの地域が独立するか」も大きな問題です。ガザだけなら問題ないでしょうが、ヨルダン川西岸地区には多くのユダヤ人入植地が居住し、イスラエルも彼らを守るための防護壁、いわゆる「アパルトヘイト・ウォール」を作っています。
ヨルダン川西岸の独立、ということになると再び武力衝突が起きる危険性があります。
ともかく和平派、慎重派のアッバス議長のもとで、このようなことがおきる可能性は低いと思われます。
・ハマスの「穏健化」とイスラエルとの「和解」
ハマスが穏健化し、武力闘争から手を引いていくという一部の見方もあります。そもそも選挙に参加した時点で穏健化の第一歩と見る向きもあります。
こうして穏健化したハマスが、イスラエルに対する強硬姿勢を改め、和解に向けて動いていくかもしれません。
とはいえ、ハマスもまだ穏健化路線転換で固まったわけではありません。むしろ強固に反対する人々もいることが各報道でわかっています。ハマスのリーダーたちが、彼らをいかに説得できるかがひとつのポイントです。
もしかしたら、穏健化ハマスに反発した強硬派が、分派を作り、混乱を広げてしまうかもしれません。
イスラエル内部もまた問題です。ハマスのテロ攻撃に怒っている人々も多いわけですから、ハマスと交渉、ということになるとこれまた国民の反発を招くおそれがあります。
今年3月末にはイスラエルで総選挙が行われます。もしかしたら、ハマスとの今後の関係をどうするか、というのが重要争点の1つになるかもしれません。
・イスラエルによる侵攻
可能性としてなくはないですが、アッバス議長がいる限り、これはかえってイスラエルよりのアッバス議長とファタハを窮地に追い込むことであり、難しいでしょう。
ただ、ハマスが「穏健化しなかった」場合、イスラエルが業を煮やしてパレスチナ暫定自治地区に侵攻する可能性は否定できないでしょう。
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イスラエル政局も混迷を増しています。シャロン首相は新党「カディマ」を昨年末に作りましたが、すぐ入院。政治活動が出来ない状態です。
カディマは穏健中道路線を目指しているといわれていますが、なにせ党首のシャロン首相が旗揚げ後すぐ倒れてしまい、政務もとれない状態ですから方向性がよくわかりません。
わかりやすく日本の例でいうと、かつてささやかれていた「石原新党」のように、シャロン首相個人のカリスマ頼りのところがある政党がカディマであり、これがこれからどう展開していくのか、かなり不透明です。とりあえず生きてさえいれば、無理矢理党首として国会議員としてい続けるようですが……。
そして右派リクード、左派労働党、さらに多くの少数政党。ただでさえ流動的なイスラエルの政局が、今度の総選挙でどのように展開するか、きわめて未知数です。
そもそも、ハマスの選挙活動をイスラエルは黙認したものだ、と思う人もいるようですが、たしかにその期間中、まるで取引したかのようにハマスのテロは止みました。
今度はハマスが、イスラエルの総選挙結果待ち、ということで、しばらくはテロを「自粛」し、状況を見守る形になるのでしょう。
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