社会ニュース/よくわかる政治

ドイツ政治の基礎2005年(2ページ目)

シュレーダー首相の解散によって実施されたドイツ連邦議会選挙。こちらは日本と違って大接戦になりました。この際、ドイツ政治の基礎を学んで、新聞やニュースをみる参考にしてみましょう。

執筆者:辻 雅之

1ページ目 【ドイツの独特な連邦制と議院内閣制とは?】
2ページ目 【ドイツの選挙制度と主要な政党って?】
3ページ目 【ドイツ連邦の歴史、そして現在の状況は?】

【ドイツの選挙制度と主要な政党って?】

比例代表に重きを置いた「小選挙区比例代表併用制」

日本の衆議院は小選挙区の結果に重きを置き、例外的に小選挙区で惜敗した人に比例代表で復活当選の権利を与える方式(小選挙区比例代表並立制)ですが、ドイツではまったく逆です。

ドイツでは、まず比例代表の票をカウントし、得票数に比例して州ごとの各政党の議席数の配分を決定します。

一方、小選挙区で当選した人は、当然議席を持ちます。

さて、ここで1つの問題がおこります。単純な話、「比例代表でA党の配分議席は30。一方、A党所属の小選挙区の当選者は33名。」ドイツはあくまで比例代表に重点を置いた方式なので、こういったときどうなる、という問題がおこります。

ここで生まれた「超過議席」(この場合は3議席)は、そのままその政党に与えられます。なので、ドイツ連邦議会は、「毎回当選議員の数が違う」ことになるのですね。

ちなみに、小選挙区と比例代表の両方に重複立候補することは可能です。これは、日本・衆議院の選挙制度と一緒です。

ドイツ連邦選挙独特の「5%」条項

ただし、ドイツ連邦議会では、比例代表票で全体の5%以上を獲得するか、小選挙区で3人以上当選しなければ、その政党は議席を獲得することができません。これを「5%条項」といいます。

戦前は、純粋比例代表だったため小党乱立となり、それがナチス台頭の1つの遠因ともいわれています。そうしたこともあり1953年この「5%条項」が導入されました。

そのため、最初の連邦議会選挙の時は10あまりあった政党も、この条項の効力もあってか、今では5政党になっています。

次からは、このドイツ連邦5政党について、みていきましょう。

ドイツの「老舗」政党 SPD(ドイツ社会民主党)

まずは、第1次大戦前からの歴史を誇る「社会民主主義政党の老舗」SPD(ドイツ社会民主党)です。

ナチス時代に非合法化されていたSPDを再建したのがシューマッハーでした。もっとも再建は旧西ドイツ地域だけに終わり、旧東ドイツ地域で別に再建されたSPD勢力と結びつくことはありませんでした。

その名の通り、社会民主主義政党です。しかし、冷戦の中で共産主義とははっきり決別し、労働者基盤の典型的左派政党から、自由主義との接近をはかる「バート・ゴーデスベルグ綱領」の採択(1959年)によって広く国民を支持基盤とする政党に変化していきます。

そしてその後はドイツ2大政党の一翼として、ブラント(任期1969~74年)、シュミット(任期1974~82年)、シュレーダー(任期1998年~)の3人の連邦首相を輩出しています。

ドイツの中道右派筆頭 CDU/CSU(キリスト教民主同盟/キリスト教社会同盟

カトリックとプロテスタントの融和を図り、冷戦期には連邦が西側陣営の一員になるように導いていった、ドイツ二大政党のもう1つの一翼です。

基本的には、CDUが主流で、バイエルン州だけはCSUが姉妹政党として活動し、両者は同じ会派として行動します(バイエルンはカトリックが多く、地方分権の気運が特に強い州として知られています)。

10年以上の長期政権を2回も担当しています。つまり初代連邦首相として連邦共和国を西側陣営に導き、現在のEUの基盤をフランスなどとともに作ったアデナウアー(任期1949~63年)と、悲願の東西ドイツ再統一を成し遂げたコール(任期1982年~1998年)の2人の政権です。

こうしてドイツ連邦政治の安定に貢献したCDU/CSUですが、反面、この2つの長期政権の末期は、いわゆる末期的症状(スキャンダルなど)が頻発し、それが後の政界変革へと結びついている面があります。

CDUからはほかにもエアハルト(任期1963~66年)、キージンガー(任期1966~69年)の2人が連邦首相に就任しています。

自由を愛する党だが右か左かはたまた? FDP(自由民主党)

FDPは、長い間二大政党の狭間で、時にはキャスティングボードを握りながら、連立政権に参加してきた政党です。

基本的に、ドイツ連邦のもとでは単独政権はいままで一度も誕生したことがありません。そういう状況下で、FDPは7人の連邦首相の政権のなかで、実に5人の政権と連立政権を組んできました。

しかも相手は、時に中道右派のCSU、時には中道左派のSPD。なんだか節操がありませんが、SPD政権とCSU政権の両方で外相を務めた(!)ゲンシャーなど、人気のある政治家たちがいたりして、連邦大統領を2人も輩出する(ホイス・シェール)など、それはそれで支持のある政党です。

ただ、ゲンシャー時代以降は、一貫しない主張と、次ページでお話しする「緑の党」などにおされ、やや停滞気味、といったところです。

◎ドイツ連邦議会総選挙の結果一覧


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