それにしてもいまなぜ、竹島を含めて韓国は「反日」を盛り上げるのか
そうでなくても、日本の韓流ブームと違い、韓国からは「反日」の声が多く聞かれます。なぜなのでしょう。韓国文化が日本でもてはやされているのだから、「勝った勝った」といっていればいいような気もしますが。これは、韓国の現代史を振り返ってみると、答えが見えてくるような気がします。
韓国は、開発独裁が成功した典型例です。開発独裁とは、経済発展と開発のためには、少々人権抑圧しても独裁政治の方が効率がいい、という考えです。
朴正煕は、まさにこれを行いました。彼による人権抑圧はものすごかったわけですが、同時に日本の資本を受け入れて高度経済成長を実現。それは「漢江(ハンガン)の奇跡」とよばれるほどの成長ぶりで、韓国は一躍NIEs(新興工業経済地域)の一翼を担うまでに至ります。
その朴正煕が1979年に暗殺され、すったもんだしたあげく、クーデターと光州事件鎮圧(最低数百人もの学生・市民が軍によって殺害)で大統領になった全斗煥(チョン・ドファン)もまた、人権抑圧しながら経済発展を実現し、貿易収支を黒字化させ韓国を先進国の一員にまで押し上げました。
今は民主化し、とりあえず普通の先進国に落ち着いた韓国ですが、ここにきて、「あの開発独裁は、あれでよかったのか?」とみんなが考えはじめたのです。
「負の歴史清算」と韓国政局との関係
全斗煥は罰せられたので歴史的評価は定まったとして、問題は朴正煕です。彼のやり方はよかったのか? 大事な領土問題や、賠償請求権を放棄してまで、経済発展を優先させ、日本としっかり議論しないまま国交正常化したのはよかったのか? そんな議論がまきおこっているわけです。盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領も、こうした歴史の「清算」を進めることを明言しています。朴正煕政権下でのさまざまな疑惑を国会で追及していくことも提案しています。で、この政権下で結ばれた日韓基本条約も見直そう、という声も上がってきました。
これは、実は盧武鉉大統領の個人的な立場による政策でもあるわけです。
盧武鉉大統領と、与党ウリ党に対抗する最大勢力、ハンナラ党は朴正煕の系統をひく政党で、しかも党首は朴正煕の娘、朴槿恵(パク・クネ)です。彼女は一時の田中真紀子さんみたいな存在で、人気のある人です。
ウリ党としては、歴史清算問題を通して、ハンナラ党にダメージを与えたい。そのためには、日本に対して妥協的だった朴正煕の政策を批判するキャンペーンを行うことが有効だ、ということになるわけです。
ちなみに盧武鉉大統領の支持率も、今は30%弱と低迷。「反日」を支持率アップの起爆剤としたい、というのはうがった見方でしょうか?
せっかくもりあがっている韓流ブームと日韓友好。しかしこの友好ムードが、韓国の政争のために台なしになってはほしくないと思うのですが。竹島問題も、感情的にならずに、大人の国同士の紳士的な決着をつけたいところです。
国際司法裁判所できちんと決着するのが「大人の国」では?
紳士的で一番いい決着法は、「国際司法裁判所で竹島問題を裁いてもらう」だと思います。国際司法裁判所はオランダのハーグにあり、国連主要機関の1つです。国際司法裁判所の判決は国際法的な拘束力を持ちます。つまり、判決に従わない国は、国連安保理から制裁の決定を受けて制裁されても文句が言えないのです。
先進国も途上国も、いろいろな国が、この国際司法裁判所で国境紛争を平和的に解決してきました。アメリカとカナダだってそうしたことがあります。
エルサルバドルとホンジュラスの有名な「サッカー戦争」の背景にあった国境紛争も、のちに国際司法裁判所の判決で解決しています。
「だったら、北方領土も尖閣諸島も裁判で」という声もあるかと思いますが、それはちょっと・・・
ロシアも中国も安保理の常任理事国なので、拒否権があります。それによって彼らは制裁を回避できるわけですから、判決に従わないおそれが濃厚なので、それだったら今は両国とも政治的に過渡期だし、しばらく待とうか、というところだと思います。
しかし、韓国はOECD(経済協力開発機構)にも入っている先進国です。話し合いで決着がつかないことは、国際司法でカタをつけてもらう、これに応じないのは不可思議です。
日本は、先にも述べたように1954年に国際司法裁判所で裁判することを要求しています。韓国は、それを拒否しました。国際裁判では、当事者両国の同意が必要なので、そのとき裁判は実現しませんでした。
しかし、今は時代も環境も変わりました。今、韓国の、先進国としての器量が問われているのではないでしょうか。