アテネ五輪の前に、ギリシャ現代政治の基礎知識を学んで、ギリシャのことをよく知っておきましょう。今は平和で民主的なギリシャですが、ここまでくるには紆余曲折があったのです。
1ページ目 【ギリシャは日本と同じく議院内閣制、そして圧倒的な二大政党制】
2ページ目 【ギリシャの民主化までの道のりはクーデターあり内戦あり、苦難の連続だった】
3ページ目 【ギリシャと隣国トルコが抱える最大の問題、キプロス分断の基礎知識】
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【ギリシャは日本と同じく議院内閣制、そして圧倒的な二大政党制】
大統領がいるが、実質的な国家首脳は首相
ギリシャは共和制の国です。国家元首は大統領ですが、基本的に国会の多数党の党首である首相が実質的な権限を握る議院内閣制の国なので、大統領の権限は限られています。大統領は国会議員の2/3の信任で選ばれ、任期は5年。再選は1回のみ許されます。首相を指名し、国会を召集したリ、臨時国会を開く権利をもっています。1986年の憲法改正で議会解散権、首相罷免権、戒厳令発令権は失い、権限は縮小されました。
しかし、重大問題での国民投票実施権や法案の議会差戻し権などをもっていて、ドイツやイタリアのように単なる「象徴」というわけでもなさそうです。軍の最高司令官でもあります。
先ほどもいったとおリ、国会の多数党の党首が首相になります。首相のもと、内閣が組織され、一般的な政策を決定します。実質的な国家首脳はですから首相です。
ちなみに今の大統領はステファノポロス氏、首相はカラマンリス氏という人ですね。
国会と政党
国会は、一院制です。つまり、上院とか下院とか、そんなものはなく、一つの議院で構成されています。議員の任期は4年です。今年3月、総選挙が行われ、1993年以来ひさびさの政権交代が行われました(五輪直前にこんな重大なことをやってしまうのって、ギリシャ人気質なんでしょうか)。
ちなみに、これは余談ですが、「VOGUE」の表紙も飾った、元スーパーモデル、レナ・クンドゥラさんが当選し、大きな話題となりました。日本の化粧品モデルも長くやったそうで、親日家の人です。
さて、総選挙の結果、与党は新民主主義党(ND)になりました。この政党は、どちらかといえば保守派です。1996年から続いていたシミティス政権を今年2004年の総選挙で倒して与党に返り咲き、政権交代を果たしました。300議席中過半数の165議席を獲得しています。
長年の与党から野党に転じてしまったのが全ギリシャ社会主義運動、長いので略してPASOKです。長期政権を維持し、功績はいろいろあったのですが、このところの「痛みを伴う改革」によって支持を落とし、野党に転落してしまいました。国会議席の300議席中117議席を獲得しています。
このND、PASOKの2大政党で、議席の94%は埋め尽くされています。まさに典型的な2大政党の国といえますね。
国会の権限
国会は年1回、最低5ヶ月の通常国会を開きます。これは日本の通常国会とほぼおなじ期間ですね。その他、臨時国会なども随時開かれます。国会を通過した法案は大統領の認可が必要です。大統領が法案を差し戻した場合、つまり拒否権を発動した場合、国会はそれを過半数の議決で無効にすることができます。
また、大統領弾劾権があります。国会議員の1/3の賛成で審議が始まり、2/3の賛成で弾劾が成立します。
苦難の末の民主政治確立
しかし、ギリシャの現代政治は政治体制がころころ変わり、軍事政権時代もあったりしてなかなか今のような民主的な政治が確立したのは70年代後半に入ってからのことです。そのあたりの現代ギリシャ政治の歴史については、次ページでお話しましょう。