1ページ目 【ギリシャは日本と同じく議院内閣制、そして圧倒的な二大政党制】
2ページ目 【ギリシャの民主化までの道のりはクーデターあり内戦あり、苦難の連続だった】
3ページ目 【ギリシャと隣国トルコが抱える最大の問題、キプロス分断の基礎知識】

【ギリシャと隣国トルコが抱える最大の問題、キプロス分断の基礎知識】

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キプロス独立までの複雑な道のり

キプロスは、アジアに分類されることも、ヨーロッパに分類されることもある、地中海当方に位置する島国です。ギリシャ系住民77%、トルコ系住民18%が住んでいます。

古代には、ギリシャの植民地であり、そしてローマ帝国などが支配してきましたが、1571年にオスマン=トルコ帝国領となります。

しかしオスマン帝国の衰えとともにイギリスが間げきをつき、1878年イギリスの植民地となりました。

しかし1950年代からギリシャ本国への併合を要求するギリシャ系住民の反イギリス運動が起こります。ただ、それでは少数派のトルコ系住民はたまったものではありません。

結局、ギリシャ、トルコ両政府がイギリスと話し合い、1960年キプロスの第3国としての独立が決まりました(チューリッヒ協定)。

しかし、今でもイギリス領はキプロス領内に残っています。中東をにらむ重要な軍事的拠点として、イギリスは手放したくないんでしょう。

キプロス内戦の勃発

憲法によって、トルコ系副大統領も置かれ、双方の民族融和が進むかに見えました。しかし、ギリシャ系のマカリオス大統領はトルコ系住民の権利を制限する憲法修正を行ったため、1963年、ギリシャ系とトルコ系との間で内戦が勃発します。

この内戦は、1964年にPKOである国連キプロス平和維持軍(UNFICYP)が派遣され、とりあえず泥沼の内戦は回避されました。

キプロスは南北分断へ

ところが、1974年、ギリシャの軍事政権がキプロスの傀儡(かいらい)化をねらって軍事介入。ギリシャ系組織によるクーデターを支援してマカリオス大統領を「殺害」。ギリシャ系の政権が、一瞬、誕生します。

しかし、マカリオス大統領は生きていました(殺害したと思われたのはろう人形だったのです!)。これでギリシャ軍事政権は大混乱です。おまけにトルコ軍がキプロスに派兵、トルコ系住民の多い北部地域37%を占領。これでギリシャ軍事政権は行き詰まり、崩壊してしまったわけですね。

結果、キプロスは南北に分断。トルコが占領した地域で1983年、トルコ系住民が「北キプロス・トルコ共和国」の独立を宣言します。もっとも、これを承認しているのはトルコただ1国だけです。

国民投票で否決された幻の南北統一

キプロスの分断は、アメリカにとっても、EUにとっても、好ましいことではありません。

ギリシャもトルコもアメリカを中心とするNATO(北大西洋条約機構)の一員です。アメリカの同盟国です。それがキプロス問題でいがみあってもらっていてはこまります。しかもこの両国はあの中東に近いだけに。

EUも、ヨーロッパ市場を東へ拡大するというとき、キプロスの分断は困った問題です。しかもキプロスは、分断されたままEUへの加盟を申請してきました。分断されたままでの加盟は、北部のトルコ系住民が経済的にも孤立させることになってしまいます。

こりゃなんとかしなければ、ということで、国連のアナン事務総長が2004年に南北大統領の仲介を行い、2004年4月、キプロス統一についての国民投票が実施されました。

この国民投票で、トルコ系住民は64.9%が統一に賛成したのに対し、ギリシャ系住民は反対に75.8%が統一に反対しました。結果、南北統一案は否決され、統一は幻と化してしまいました。

国民投票にかけられた国連主導の統一案では、北でのトルコ軍の駐留を許すなど、トルコ系に譲歩した内容で、ギリシャ系にメリットがなかったため、ギリシャ系住民の不満を買ったといわれています。

こうして、キプロスは南側、ギリシャ系だけがEUに加盟することになりました。

ギリシャ・トルコ関係は修復できるか

キプロス問題は、ギリシャ・トルコ両国の100年にわたる対立の歴史の縮図です。キプロス問題が解決しない限り、ギリシャ・トルコ関係は良好にならないでしょう。また、戦争が起こらないともいえません。

ただ、関係が好転する兆しはあります。1999年のトルコ大地震では、ギリシャから救済チームが派遣され、トルコ人の反ギリシャ人感情が若干和らいだといいます。

今年のアネテ五輪の聖火リレーでは、キプロスに着いた聖火は北のトルコ系地域にも、もたらされました。民族融和・統一を目指す気持ちには、ギリシャ系もトルコ系も変わりはないのでしょうか。

そして、今回のアテネ五輪です。ギリシャにトルコチームがやってきます。はたして五輪が文字どおり両国そしてキプロスに平和をもたらすきっかけとなるのか、注目したいところですね。



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