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地方分権、三位一体改革とは?(3ページ目)

構造改革の中でもちょっとわかりにくいということであまり報道量の少ない三位一体改革。しかしこれが実現すると、日本の政治の形が変わりそうです。しかしなかなか改革は進まない。そのあたり解説します。

執筆者:辻 雅之

1ページ目 【「三位一体改革」なにを一体的に改革するの】
2ページ目 【国庫支出金」「地方交付税」ってなに?】
3ページ目 【改革がうまく行けば国の政治のありかたも変わる?】

【改革がうまく行けば国の政治のありかたも変わる?】

こちらも要チェック! 政治についての基本知識と基本用語

「三位一体改革の基礎知識2008」がアップされています。こちらもあわせてお読みいただけると現状がよくわかると思います。(2007.12.06追記)

地方交付税も「フリー財源」ではなかった?

地方交付税は総務省による複雑な計算式によって、自動的に地方に与えられています。いや、与えられていたと思われていました。

ところが、ふたを開けてみると、そうではなかった。総務省は地方交付税で埋めるべき財政格差を示す指標を、意図的に操作していた。この自治体には多めに交付するため、過疎の度合いを必要以上に上げて計算してきたとか。

総務省も、こういうことをすることによって、地方自治体を実はコントロールしてきたのでした。フリーに使えるはずの地方交付税の交付を、意図的に操作して、地方交付税の裁量権を握り、地方交付税を暗に使い道指定のひもつき財源にしていたのです。

だから、総務省も、自分たちの権限を残すため、地方交付税をあまり減らしたくない。

結果、どの官庁も、自分たちの権限を守るため、三位一体には消極的。そこでなかなか話が進まないのです。そして、官庁は自分たちと利害をともにする族議員たちとつるんで、ますます三位一体改革を骨抜きにしようとしている。

こうした官庁や族議員たちの動きによって、三位一体改革はなかなか進まない。当然、地方分権もいっこうに進まない、ということなのです。

三位一体が理想的に成功すれば、国のかたちは変わる

三位一体改革自体は、成功すればかなり評価できるものだと、私は考えます。

つまり、税源移譲によって地方が自由にお金を使えるようになり、地方のことは地方できめるようになる。どこかに橋を作るとか、学校を作るとか、病院を作るとか、そういうことは地方が決める。高速道路なんかも、複数の県がお金を出しあって、作ることができるようになるかもしれません。

そうすると、今まで「この地方に道路を作るため頑張ります!」とかいって票を集めてきた国会議員はいらなくなる。自然と国会議員は、外交や防衛、国の根幹政策にかかわることを考え、法律を作ることに専念するようになる。

つまり、政権交代だ改革だなどと党中央ではいいながら、各議員たちは地方に利益をこれだけ与えますよ、という選挙がなくなるわけです。国会議員の選挙は、純粋に国家の基本政策を争点として、争われる選挙になるわけです。

まとめると、三位一体改革によって、(まあちょっと理想的な結果論ですが)

・地方は自主財源を得て自立し、中央のいうことを聞かなくてもフリーに政策を行うことができる。地方分権が進む。

・国会議員は、これまでの地方の利益誘導型のスタイルから、国家の根幹政策を考えるプロ集団となる。国政選挙は、純粋に国家のあり方について論じる場になる。


ということです。今回の参院選ではあまりクローズアップされていませんが、各政党が地方財政の改革についてどんなことをいっているのか、注目した方がよさそうですよ。




>>「よくわかる経済」記事「小泉改革と地方経済」
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