時代とともに移り変わる増資のタイプ
有償増資は、新たに発行する株式に対して、投資家がお金を出してその株式を買うものです。有償増資の方法として、代表的なものは以下の3つです。
時価より安く株式を買うこともある? |
◎株主割当発行増資
◎公募発行増資
◎第三者割当増資(前回記事)
◎株主割当発行増資
既にその銘柄を保有している株主しか買うことができません。言い換えれば、既存株主への特典です。
新しく株式を発行し増資を行った場合、もともと持っている株式数に比例して、買うことができる上限の株数が決められています。
その発行価格は、時価よりとても安く決められます。もちろん、買わない選択をしても構いません。自由です。でも相当安く手に入るので、株主にとっては買わないともったいない、というケースが多いようです。
1960年代に日本経済が発展していった時期には、この株主割当発行増資が主流でした。株主から新しい資金を提供してもらい、その資金で新たな設備投資や新製品の開発をします。こうして、会社は大きな発展を遂げます。会社の発展に伴い株価も上昇するので、同時に、株主も財産を増やしていったのです。
◎公募発行増資
新しく株式を発行する際、お金さえ払えば誰でもその新株を買うことができるものです。その発行価格は時価を基準に決められます。
バブル経済絶頂期にはこの方法が主流で、企業は投資家のニーズを上手に利用し資金調達を行いました。その時期は、資金が余るほど集まってきましたので、本業に使う資金のほかに、土地への投資などに資金を費やしていったのです。
当時は発行価格が安くなくても、買ってくれる投資家は十分集まってくれました。
投資家も、早く買わないと株価が上がってしまう、と思ってしまっていた時期でしたからね。
現在でも、成長過程にある企業や、資金調達が容易な(言い換えれば投資家に資金を出してもらうことに対して自信がある)企業が増資をする際に、公募発行増資の形態をとっています。
公募株で儲けるには念入りに企業チェック |
◎第三者割当増資(三菱グループなどの例)
既にその株式を持っている株主か否かを問わず、ある特定の第三者に、新しく発行するその株式を買ってもらうことです。
裏返せば、誰でもその会社に資金を投じたいと思わないような状況なので、ある特定の第三者しか、引き受けようがないのです。現在の有償増資はこの形が圧倒的に多いです。
また、ある特定の第三者に、自社の株を持ってもらいたい時に(縁故関係があるとか、将来的に持株比率を高めてほしい狙いがある時)この方法をとることもあります。
その発行価格はその増資に際し決定されるわけですが、時価より大幅に安く設定されると既存株主に比べて増資の分を買う出資者が利益を得ることになります。安い金額で手に入れても、時価は既存株主と同じ評価のマーケットにおける時価ですから。ですから、時価より大幅に安い発行価格となる場合は、株主総会での決議を必要とします。
以上のように、「増資」は資金集めの目的に応じて、調達方法に特徴があります。
個人投資家としても、公募発行増資の株式を購入する機会もあることですら、知っておくと良いでしょう。
増資による資金集めと、融資による資金集めでは、会社に与える負担が大きく違います。融資は、それに対して利子を支払わなければなりませんし、償還期限が来たら、借りた資金は返済しなければなりません。増資で集めた資金は、会社の自己資本になるので、会社が自由に使える資金ですし、会社が株主に返済する、という発想もありません。
自力で立つことができない企業が後を絶たない今、これからもまだまだ、増資を要請したい会社は数多くあると思われます。資本増強のニュースも、日本経済の「いま」を知る上で、見逃せない話題のひとつです。これを参考に、今後も注目してみてくださいね。
【関連サイト】「増資とは?融資とどう違う?」「“株式分割ってナニ?」「東京証券取引所 適時開示情報閲覧サービス」
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