社会ニュース/よくわかる政治

変わりゆくスイス政治(3ページ目)

永世中立国で知られるスイス。イメージ先行の国ですが、意外と政治のことについてはあまり知られていませんね。スイスの建国から今の政治問題まで、わかりやすく解説しています。

執筆者:辻 雅之

1ページ目 【スイスの誕生とウィリアム=テル】
2ページ目 【多言語国家を維持する独特の政治システム】
3ページ目 【時代ともに変わっていくのか「永世中立」】

【時代ともに変わっていくのか「永世中立」】


こちらも要チェック! 政治についての基本知識と基本用語

そんなスイスのもう一つの顔、それが「永世中立国」としてのスイスです。

永世中立はどの同盟にも属さないという政策を徹底するもので、これによって平和や自由を守ろうというものです。19世紀初頭のウィーン条約で、国際的に承認され、第1次・第2次世界大戦でも中立を堅持してきました。

そのため、市場統合をめざすEU(ヨーロッパ連合)はおろか、ついこの間まで国連にも加盟してきませんでした。

しかし、1990年代末に、永世中立の「影」の部分が表面化し、国際的な問題となります。スイスの銀行に、ナチスが第2次世界大戦中、ユダヤ人から略奪した財産を、スイスが隠しておいた、ということが発覚するのです。

さらに、ナチスによって犠牲となったユダヤ人の口座が眠っていることも隠し続け、犠牲者の遺族などに返そうともせず、50年あまり隠してきた、ということもわかります。

永世中立といっても、あのナチズムに対しても中立なのか。中立ということをたてにして、国際社会で果たすべき役割を果たさないできたのではないか。そんなことが突き付けられたわけですね。

(その後、ユダヤ人遺族などへの返還が進んでいます。)

さらに国際経済のグローバリゼーションの波、周りのヨーロッパ諸国の市場統合、そんななか、このままではスイスが孤立してしまうという危機感が、じょじょに生まれてきているようです。

それを反映していたのが、2002年の国連加盟だったのでしょう。

今年5月の国民投票で、軍隊を大幅に削減し、徴兵期間を短縮することが決定しました。それまでスイスは中立を守るために「ハリネズミ」といわれるような武装を国民レベルで行ってきたのですが(各家庭に武器があったり)、そういう時代ではないということなのでしょうか。

  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます