2ページ目 【フセイン政権と共通点? シラクのアサド政権】
3ページ目 【ちょっとずつ進みはじめている民主的改革】
【ちょっとずつ進みはじめている民主的改革】
イラクと同一視してしまうのはどうかと思う「ダマスカスの春」
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そんなアサド政権ですが、いままでいってきたアサド大統領は実は2000年に死去しています。そして、すぐさま次男(長男はすでに死亡)のバシャールが大統領職を次いでいるのです。だからアサドの次はアサド。ややこしいのでバシャール大統領とよびましょう。
バシャールは眼科医としてイギリスに滞在していた経験があるせいか、ゆっくりとした改革を行いつつあります。この動きを「ダマスカスの春」ということがあります。銀行の民営化、証券取引所の設置などを打ち出し、また民間新聞発行の許可、政治犯への恩赦、野党活動再開の容認なども行っています。
しかし、民主化の動きはゆっくりとしたもので、いぜんとしてバース党・アラウィー派の独裁体制はつづいたままです。一度は撤去された町中の故アサド大統領の肖像も、今は復活しているようです。
どうやらバシャールは経済の改革を先行させるか、または一党独裁をくずさないため経済の改革のみに専念しようとしているようにみえます。
または、政権内部でも改革派、保守派の対立があるのかもしれません。たとえば2000年末に長年続いてきた「戒厳令」の解除を大統領が発表したと報じられましたが、翌年1月、オムラン情報相がこれを否定する発表をしました。これは、政権内部での対立を反映した動きだったのかもしれません。
こんなシリアですが、長年アメリカとは敵対関係にあり、アメリカはシリアを「テロ支援国家」「ならず者国家」などといってきました。たしかに、故アサド大統領時代にはパレスチナゲリラのテロを支援してきたといわれるシリア。イラクの次はシリアをなんとかしたいのかもしれません。
しかし、このバシャールの改革を見守りたいという気持ちもあるはずで、シリア情勢が良化すればパレスチナ和平も前進が見込めるだけに、アメリカには慎重な外交政策をお願いしたいところです。