例えば第6巻の『ハリー・ポッターと謎のプリンス』の日本語版は上下巻セットで3,990円なのですが、英語版第6巻の『Harry Potter and the Half-Blood Prince』は、ハードカバー版でも3,229円、ペーパーバック版にいたっては1,226円と日本語版よりも遥かに安いのです。こうなる原因は何でしょうか? これもハリー・ポッターの「魔法」なのでしょうか?
英語版には、「OFF○○円」など日本語版にはない表記がある。これはなぜだろうか? |
【CONTENTS】
本やCDは値引きができない。再販制度とは?(1P目)
熾烈な値引き競争が展開するアメリカの出版業界(2P目)
問われる再販制度の必要性(2P目)
先進国では珍しい再販制度の維持(3P目)
本やCDは値引きができない。再販制度とは?
この現象を説明するためには、まず日本における再販制度というものを知っておく必要があります。再販制度とは、正式には「再販売価格維持制度」というものです。商品は、メーカーが作って卸売業者や小売店に渡り、小売店が消費者に販売します。ここで言う「再販売」とは、メーカーが小売店などに売る「販売」の次の部分、つまり小売店が消費者に売る行為を表しています。そして再販制度とは、その再販売行為における価格、つまり小売店が消費者に売る段階での価格を、メーカーが決めてしまう制度を意味します。この制度が認められている場合は、メーカーが決めた定価以外では、商品を小売店が販売することはできません。値引きが認められない制度ということなのです。
さて、こういう制度が認められると、消費者にとっては不利益が多くなります。というのも、値引きがなければ、消費者は常に高い価格で商品を買わなくてはいけないからです。ですから、現在の日本では一部の商品を除いて再販制度は廃止されています。ところが、再販制度がまだ認められている一部の商品というのが、本やCDといった著作物なのです。
本やCDと、その他の製品の値段のところをちょっと見比べてみましょう。本には「定価」と書かれています。これは「定価」であり、小売店はこの値段以外では売ってはいけないのです。それに比べて家電などでは「メーカー希望小売価格」とあります。これはあくまでメーカーの希望価格であって、実際にいくらで消費者に売るかは小売店が決めていいのです。
→次ページでは、それに対するアメリカの事情を見てみます。