【「族」政治の今後は?】
「族」政治は、政策立案権を官僚から国民の代表である国会議員へと移したという点では、評価できるしくみだったといえます。しかし反面、「政官財」といわれる癒着の構造で政策が決まってしまい、国民全体の立場からの政策がつくられにくくなってしまっていることが大きな問題です。
しかも、実際には一部の有力な「族議員」たちの「密室談合」によって政策が決めれられてしまうわけですから、国民の政治不信も増すばかりです。
小泉首相は、このような政治を打破するため、党主導の政策立案システムをあらため、内閣主導の政策立案システムにしようとしています。まず「特殊法人は全部廃止か民営化だ!」とぶちあげ、内閣主導でいっきに実現に持っていく、この「トップダウン手法」が最近目立つようになっています。
最近「抵抗勢力」の抵抗がいちだんと激しくなっているように見えますが、これは党つまり「族」主導の政策立案システムを是が非でも守るためなのです。
でもよく考えてみたら、「内閣主導か党主導か」というのは変な話。日本のような議院内閣制では、党の代表である内閣と党は一体に行動するもの。政策だって、両者が一体となってつくっていくのが自然です。
ところが、日本では自民党が数十年の長きにわたって政権をとりっぱなしで、政策によって野党と競争するということがなくなってしまいました。政策は巨大な自民党内部の「族」同士の競争に用いられるようになってしまったのです。
もし自民党が数年おきに野党になってしまう状況だったらどうでしょう。野党になってしまったら、政策を立案しても実行することはできず、政策立案権を失ってしまいます。議員が自民党内部で「族」にわかれてしのぎをけずっていてもムダなことです。官僚や業界が自民党の「族」に頼りきる構造も同様でしょう。
いま「族」と「内閣」のあいだで争われている問題、たとえば特殊法人問題、医療制度問題、郵政民営化問題など、本来ならば選挙で争点となるべき重要な問題です。しかしつねに自民党が与党であるという状況のもと、これらの議論は自民党のなかだけで行われ、処理されてしまいます。
こういう構造自体を変えないで「党主導」だ「内閣主導」だといったところで、国民はまったくかやの外。「族」でも「内閣」でもなく、国民が政策を選択できる政治環境が、本当に望ましい姿ではないでしょうか。
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