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自爆テロリストの心の「闇」

10日、ロンドンで21人の自爆目的のテロリストが身柄を拘束されました。自爆テロリストは何を想いながらテロに走るのでしょうか?

執筆者:鳥羽 賢

世界に大勢いる自爆テロリスト

イギリス
写真はイギリス。ロンドンは去年もテロの標的になっている。
8月10日、ロンドンで航空機内に爆発物を持ち込んで、飛行機ごと爆破させるテロを計画していたとして、21人の身柄が当局に拘束されました。この犯人たちは、飛行機内で爆発物を爆発させ、飛行機の乗客ごと自分も死ぬつもりだったのでしょう。自分ごと爆弾で周囲の多くの人を吹き飛ばすテロリストのことを「自爆テロリスト」と呼びます。

世界の誰もが心から消しさることのできない2001年9月11日のテロも、自分ごと飛行機をビルに突っ込ませるという「自爆テロリスト」の行動でした。現在自爆テロはこれらのような代表的事件以外にも、中東地域を中心に頻繁に起こっています。特にイラクやイスラエルなどで、自爆テロが行われる回数が多くなっています。

何百人もの人を殺し、また自分も一緒に死んでしまうなど、日本人の常識では考えられません。彼等は一体なぜこのような常軌を逸した行動をするのでしょうか?どうすれば彼等の心を理解できるのでしょうか?

背景にある貧困、戦争、そして絶望

自爆テロリストは、決して個人でこのような行動に出ているのではありません。個人で実行するにはあまりにも恐ろしく、用意にもお金や手間がかかります。自爆テロリストには、専門の養成機関があるのです。

そういった養成機関が中東地域の人間、主に若者を引き込んで自爆テロリストに仕立て上げるのです。なぜ若者たちは、自爆テロ組織にハマりこんでしまうのでしょうか?

自爆テロリストになる若者の心には、深い「闇」があることでしょう。その闇とは、まずは貧困があります。日本は格差社会などと言われても、まだまだ世界の中では豊かな方の国です。世界には日本では考えられないほど貧しい暮らしをしている人が大勢います。貧しい家に生まれた若者は、将来に希望が持てないために、命を投げ出すことに抵抗が少ないのです。

そして戦争が若者たちの心の闇をさらに深くしています。中東地域では何十年にもわたってイスラエルとパレスチナの争いが続いていて、肉親を殺されたケースなど日常茶飯事です。肉親を失った者は、心に深い憎しみを植えつけられます。そしていつか必ずその復習をしようと考える者も多いでしょう。その復讐心につけこみ、自爆テロの道に引きずり込むのです。

いずれのケースでも、自爆テロリストになる者の心には、ある種の「絶望感」が存在しています。貧しさから来る絶望、そして肉親を殺されたことから生まれた絶望…。この世に絶望してしまったものは、自分の命をも粗末にして、そして他人を殺すことにあまり抵抗感もなくなってしまうのかもしれません。

→そして若者をテロに駆り立てるために、組織が与える「報酬」とは?
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