【ではなぜイスラム教社会は民主的でないのか】
それではなぜ、イスラム教社会には民主主義がひろまらないのでしょうか。
といっても、国民のほとんどがイスラム教徒であるトルコでは、戦後数回のクーデターがあったものの、一貫して選挙によって政権をになう政党が決められています。
また、イスラム教を国教とするマレーシアでも複数の政党による自由な選挙が行われていまし、インドネシアでも民主的な政治システムが機能しはじめています。
イスラム教社会だから民主主義がまったく根付かない、イスラム教の国はイラクやサウジアラビアのような国ばっかりだというのは全く誤った知識、イメージなのです。
それでは改めて。なぜ「中東・西アジアのイスラム教社会は非民主的な地域が多い」のでしょうか。
貧困はやはり大きな原因の1つでしょう。シビアな貧困は悠長にものごとを決める民主政治では救えないのかもしれません。また貧困は国民の教育を妨げます。新聞も読めない国民が多ければ、独裁者に抵抗することすらままならないでしょう。
貧困とは無縁の石油産出国(サウジアラビアなど)は逆に、豊富なオイルマネーが国民の教育を妨げています。放っておいてもいい暮しができる状況で、産業をおこすために教育をしっかりしよう・・・という気運がなかなか起こらないのが現状です。
また、「砂漠という環境」を生き抜くには強力なリーダーシップが必要であり、西洋的な民主主義はそぐわない、という主張もあります。
しかしもっとも重要な要因は「この地域が平和ではない」ということにあるような気がします。第2次世界大戦後、4度の中東戦争、アフガン侵攻、イラン=イラク戦争、レバノン戦争、湾岸戦争、そして今度の「新しい戦争」と、この地域で戦争に巻き込まれていない国はほとんどありません。
しょっちゅう戦争がおこる状況では、軍が力を持ち、いつでも国民や経済を戦争に傾けることができる軍事政権のような政治体制がはびこってしまいます。とうぜん多くの資源が戦争につかわれてしまうため、貧困はさらに拡大して行く。
そしてそんな独裁政権が、イスラム教を政治に利用しているわけです。
いずれにせよ「イスラム教=民主主義とは相容れない」これは日本人やヨーロッパ人などの非イスラム教徒から見た一方的なイメージのようです。中東の和平が実現すれば、「こわいイスラム教」などいずれ過去の話になるはず。われわれも他人事とは考えず、向き合って行きたいものです。
▼当サイトイスラム関連Close Up!
●イスラム教と反米主義の関係とは
●テロに揺れるイスラム諸国
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。