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火災に強い家にする!(2) お隣のもらい火から自宅を守る!(2ページ目)

もしも、近隣から火災が発生した場合、火災に強い住宅にするには? 素材によって違う外壁の熱伝導率に注目して、耐火性についてみていきましょう。

大塚 有美

執筆者:大塚 有美

長く暮らせる家づくりガイド



◆素材によって違う熱伝導率が耐火性のカギとなる◆

類焼、いわゆるもらい火をできるだけ防ぐという点からすると、外壁をどんなものにするか、ということが気になってきます。

住宅の構造とも関連してきますが、外壁にはモルタルやサイディングのほか、コンクリートなどが考えられます。その際注目したいのが熱伝導率です。

例えばある会社の実験結果によると、PC版(プレキャストコンクリート)やALC版(軽量気泡コンクリート・へーベル版)は、1時間加熱しても、裏面の温度が70~90度程度で、表面はほとんど変化がないか、細かいひび割れが起きる程度だったそうです。

それに対して、サイディングやモルタルは加熱開始数十分後に、裏面の温度が著しく上昇し、木材の引火温度といわれる260度に達したため、危険なので実験を中止。表面には大きなひび割れが発生したという報告があります。

私も実際にある実験に参加したことがあります。3種類の外壁にバーナーで15分間加熱するという実験でしたが、ALC版、サイディング、モルタルの中で一番熱伝導率が低かったのは、ALC版でした。サイディング、モルタルは熱くて、やけどをしそうで触ることができませんでしたし、裏側のグラスウールの断熱材が焦げていました。表面のひび割れがもっとも大きかったのはモルタル。ALC版とサイディングは表面が少し変色した程度でした。しかし、裏側のグラスウールの断熱材に影響がなかったのはALC版だけでした。

外壁材の裏側にどのように熱が伝わったか、外壁の素材によってどんな違いがあるのかを目と手で確認することができた実験でした。

◆外側の被害が軽微なら、鎮火の後の補修も容易になる◆

このように、外壁そのものの耐火性能や加熱されたときの被害の状態は外壁材によって異なるため、自宅にどんな外壁材を使うかよって、万が一、隣家や近隣が火事になったときに受ける影響が違ってくることになります。

外壁の表面に大きなひび割れが起きるなど損傷が大きければ、その部分の外壁材を取り替えるなどの措置が必要になってきます。しかし、表面の被害が小さければ、再塗装くらいですむかもしれません。

さらに、外壁のそのものの温度が上昇しにくく、裏面に熱を伝えにくいということは室内の損傷も小さくてすむことにつながります。裏面の温度上昇が大きければ、室内側にある断熱材や下地材が焦げてしまうこともあるでしょう。そうなると、壁紙の張り替え、断熱材の入れ替えなど、かなり大掛かりなことになってしまいますね。経済的な負担も大きくなります。

また、熱伝導率が小さいということは、それだけ断熱性が高いということですから、住宅そのものが普段から外気温の影響を受けにくく、それだけ快適な室温を保つことができるわけです。

外壁を選ぶときは、1時間準耐火などの耐火性能の表示だけでなく、熱伝導率にも注目して、総合的に火災に強い外壁を選ぶ必要がありそうです。もちろん、窓などの開口部にも、シャッターなどの燃えにくい設備を取り付けるなどの工夫も必要です。

外壁など外まわりの被害の範囲が小さくてすんだり、被害の程度が軽微ですめば、消火後の補修の工事期間も費用の負担も軽くてすみます。これは大切な資産を守るという観点からも重要なことなのです。

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