◆少な過ぎる? 耐震補強工事の実施
先にも説明したように、木耐協を通じて耐震診断を受けた家は約8万棟あるそうです。そのうち、8割以上が耐震性に不安のある家なのですが、実際に耐震補強工事を受けたお宅は24%しか、ないそうです。それはどうしてなのでしょう?
倒壊または大破壊の危険があると診断された家は、築年数が古い家が多いので、診断をきっかけに建て替えをした家もあるでしょう。しかし、危険だということがわかった後も、対策をとらずにそのままになっている家もあるはずです。費用のことや、病人がいるなど、さまざまな事情があるとは思うのですが・・・。
ただ、対策といっても、次のようにいくつか考え方があり、その考え方によってとるべき内容がかわってくると思います。
【考え方1】最低限、命を守れるようにする
費用も工期も最小限にして、大地震で家はある程度倒壊したとしても、家族の生命だけは守れるように耐震補強をするというもの。
【考え方2】命を守り、地震後もできるだけ小さな補修で住み続けられるようにする
多少費用をかけても、震災後も暮らし続けられるように、耐震補強をするという考え方。どのくらい工事費がかかるかということと、住まいの築年数などと合わせて、耐震補強工事を担当する施工会社とよく相談したうえで、結論を出す必要がありそうです。
【考え方3】リフォームと一緒に耐震補強をする
家のどこかをリフォームするときに、同時に耐震補強工事をしてしまうという方法。
必要であっても耐震補強工事をしない家が多いのは、耐震補強工事の結果が目に見えにくく、満足感が得られにくいというのがあると思います。たとえばキッチンのリフォームをしたら、料理をするたびにリフォームをしたことを実感できるのに、耐震補強工事では、見た目でわかるのはせいぜい張り替えた壁のクロスの一部分。これでは、なかなか踏み切れないのもよくわかります。床や壁の仕上げ材をはがさなければならないのですから、リフォーム工事と一緒に耐震補強を行えば、効率もよいですし、工事をしたという実感もわくことでしょう。
◆わが家は大丈夫なのか?
さて、わが家の耐震性は大丈夫なのか、もっとも気になるところですね。最も基本となる耐震性のチェックポイントをあげてみましょう。
●木造でも3階建て住宅の場合
建築確認申請の際に簡易の構造計算書が必要になります。ですから、耐震性についてもその時点である程度のチェックは受けていることになります。
●2×4工法による住宅、鉄骨造や・鉄筋コンクリート造
床・壁・天井の面で構成される2×4工法による住宅や、構造計算が義務づけられてい鉄骨造や・鉄筋コンクリート造などの場合は、一定以上の性能は確保されているといってよいでしょう。
●プレハブなどの住宅メーカーの建物
国土交通省などの認定を受けた独自の工法や建築材料を用いて建築しているケースが多いプレハブなどの住宅メーカーの建物も同様です。
●木造軸組工法による住宅の場合
建築が昭和56年(1981年)以前か以降か。
築年数は、ひとつの分岐点となると考えてよいでしょう。
●その他、構造、築年数に関係なくすべての住宅について、ここをチェック
築年数が25年以上で、下記のようなポイントが複数当てはまる木造住宅の場合は、一度耐震診断を受けてみるのもよいと思います。
・基礎に鉄筋が入っていない
・基礎にひび割れが複数見られる
・家の形が不整形である(例えば、L字型やコの字型など)
・壁が極端に少ない面があるなど、壁配置のバランスが悪い
・シロアリの被害に合った
・開閉しにくいドアや引き戸がある
無料の耐震診断は、木耐協のほか、自治体でも行っているところがあるようです。しかし、耐震診断や耐震補強工事をすすめる業者の中には悪質な会社もあるようなので、くれぐれもだまされないように。不安をあおったり、補強工事を強要する会社は要注意です。
建築基準法は最低限の基準を決めたもので、基本的に震度5強までを想定したものです。ということは、建築基準法を守って建てた家でも、阪神・淡路大震災クラスの大きな地震が発生した場合は、築年数やプランによっては倒壊の危険性があるということになります。ですから、家を建てるときに、耐震性についても経験や勘などではなく、しっかりとした根拠に基づいた説明をしてくれる会社に施工を頼みたいものです。
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