情熱がこもる。個人コレクターの浮世絵コレクション
日本の浮世絵文化を支えるために、大きな役割を果たしたのが大コレクターの存在。貴重な浮世絵が集まったコレクションの保存のために、美術館が作られることがしばしばあります。浮世絵に魅せられた人々のコレクション、たっぷりと見てみましょう。■太田記念美術館(東京都)
~靴を脱いで、リラックスして浮世絵を鑑賞
原宿と表参道という流行の中心地にある美術館。 太田清藏氏が戦前より収集した浮世絵、12000点あまりを収蔵、季節やテーマに合わせて約一ヶ月ごとに80点あまりを展示しています。ちなみに近年、パリにある東洋美術専門の美術館、ギメ東洋美術館が所蔵する葛飾北斎最晩年の作品「龍図」と、この美術館が所蔵する「虎図」が、対幅(二つの絵で一組)の作品であることがわかり、大きな話題となりました。
エントランスで靴を脱いで入場するシステムのため、心なしか、いつもよりもリラックスして鑑賞できるのが嬉しいところ。展示のほかにも、浮世絵文化を知る講座なども開催されています。
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住所:東京都渋谷区神宮前1-10-10
TEL:03-5777-8600 (ハローダイヤル)
開館時間:10:30~17:30
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)、展示替期間、年末年始
入場料:展示内容により変更あり
公式サイト
■平木浮世絵美術館 UKIYO-e TOKYO(東京都)
~三人の名コレクターが集めた浮世絵が一同に
現在、東京の活気あるスポットとして注目を浴びている豊洲にある浮世絵専門の美術館。重要文化財11点、重要美術品238点の指定作品を含む約6000点のコレクションは、浮世絵コレクターであった平木信二氏のコレクションに加え、戦前の三大コレクションのうちの二つ、斉藤コレクション、三原コレクションを合わせたもの。
(残りの一つは、東京国立博物館の核になっている松方コレクション)。
菱川師宣から、多川歌麿、東洲斎写楽、葛飾北斎、歌川広重、さらに浮世絵以降の近代版画の橋口五葉・伊東深水に至るまで、歴史をしっかり辿れる美術館です。
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住所:東京都江東区豊洲2-4-9 アーバンドック ららぽーと豊洲 ISLANDS 1F
TEL:03-6910-1290
開館時間:9:30~17:00
休館日:月曜日(祝日の場合は翌日)、展示替期間
入場料:大人・大学生500円、小・中・高校生300円
公式サイト
■山口県立萩美術館・浦上記念館(山口県)
~質の高い浮世絵と東洋陶磁器のコレクション
萩市出身のコレクター、浦上敏朗氏の浮世絵コレクションをもとにした浮世絵版画と東洋陶磁器を専門とする美術館。約5200点のコレクションのなかには、世界で3点しか存在が確認されていない、葛飾北斎の美人画『風流無くてなゝくせ 遠眼鏡』などの名品も多数。
連続した白壁や、毛利長屋敷などの萩の歴史的な要素を取り入れた丹下健三設計の建物も、鑑賞ポイントの一つです。
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住所:山口県萩市平安古586-1
TEL:0838-24-2400
開館時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜(祝日の場合は開館)、年末年始、展示替期間
入場料:一般300円、学生200円(常設展のみ。特別展は別料金)
公式サイト
■日本浮世絵博物館(長野県)
~先祖代々の珠玉のコレクションを鑑賞
信州でも有数の豪商であった酒井家。6代目がスタートした浮世絵収集は、代々に引き継がれ、11代目の当代に至るまでになんと10万点。そのコレクションを展示するための美術館です。初期の浮世絵から現代の版画に至るまで、幅広いジャンルの作品を展示しています。
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住所:松本市島立小柴2206-1
TEL:0263-47-4440
開館時間:10:00~17:00
休館日:月曜
入場料:一般1050円、小中学生530円
公式サイト
はやわかり浮世絵 用語と歴史をかんたん解説
■そもそも浮世絵ってどういう意味?カラーの木版画、というイメージが強い浮世絵。確かに、浮世絵の大部分は色刷りの木版画(錦絵と呼びます)ですが、これはジャンルの一つでしかありません。
浮世絵はその名のとおり「浮世の絵」のこと。つまり、その時代に流行した風俗について描かれる絵、ということなんです。
■肉筆と錦絵 浮世絵の簡単な歴史
錦絵と呼ばれる木版画が発明されるまで、浮世絵のほとんどが絵師が筆で描いた直筆の絵、「肉筆画」でした。菱川師宣の「見返り美人」はその代表例。一点ものが多く、どの作品もとても高価。庶民の手には届かない高級品でもありました。
その後、明和から文政にいたる時代(18世紀後半から19世紀頃にかけて)、鮮やかな多色刷りの錦絵(いわゆる浮世絵版画)が流通するようになります。色鮮やかに、大量に生産されるようになり、庶民にも親しまれるようになっていきました。
■浮世絵にはどんな題材が扱われるの?
風俗全般ならなんでも浮世絵になっています。街の美人さんから、人気の歌舞伎役者、関取さんなどの人物はもちろんのこと、江戸に旅行ブームがやってくると、葛飾北斎や歌川広重などの「東海道五十三次」や「富嶽三十六景」などの風景画が流行。幕末から明治の頃には、幕府や政府を揶揄する戯画が好評を得るなど、さまざまな浮世絵が生み出されていきました。
■初摺と後摺の違い
書籍の初版と同じく、錦絵では最初に刷ったものを「初摺」、その後に刷った錦絵を「後摺」と呼んでいます。後摺では、初摺のときに見つかった、さまざまな問題点を修正、改良することがあるため、初摺と後摺には、大小さまざまな違いがあることも。
摺の違いも楽しめるようになるといわゆる「ツウ」の仲間入りですね。
■浮世絵の展示が頻繁に変わるのはなぜ?展示室が暗いのはなぜ?
見たい浮世絵が展示されているという情報を聞いたのに、展示期間が短くてなかなかスケジュールが合わない…。
浮世絵は、さまざまな絵画作品のなかでもとりわけデリケート。当時のままの鮮やかな状態のままにしておくために、展示室の照度を抑え、頻繁に(多いところは数週間から月代わりで)展示替えを行っています。
お目当ての作品の展示と美術館訪問のタイミングを合わせるのはなかなか難しいですが、逆に考えればいつも違う作品を見られるということ。
お気に入りの美術館を見つけて、頻繁に通えば、そのぶん多くの浮世絵に出会うことができるはずです!
次のページでは、一人の絵師のための専門美術館や、美術館でしか手に入らないオリジナルグッズを紹介します。