田園調布は電信柱天国!?
上の2枚の写真は、高級住宅地として有名な東京・田園調布の写真です。きれいに整えられた美しい並木の後には、等間隔で電信柱が並びます。並木が電信柱を隠しているので良いと考えるかもしれませんが、並木道から一本はずれると、やはり街並みに電信柱が並び、家々の上や横を電線が走ります。いかがでしょう? これが東京で最高といわれる高級住宅街の姿です。
デザイン性の高い、こんな住宅のまわりにも、無粋な電線が縦横に走ります。
この2枚は東京・世田谷区でも屈指の高級住宅地の街並みです。このあたりも昔から閑静な住宅街として知られるエリアですが、やはり電信柱の列が続いています。土地のネームバリューと建っている住宅の大きさや仕様の豪華さを除いた街並みは、下町と変わらないように見えてしまいます。
さらに、街並みと電信柱の関係に興味がわいてきたので、こんなところにも行ってみました。
しかし、右の写真を見てください。この通りに交わる通りは…
これは、東京都千代田区一番町の写真です。英国大使館の裏の通りですが、この通りには電信柱はありません。さすが、皇居から2本しか入っていない通りだけのことはあります(1本目は内堀通り)。ですが、この通りに直角に交わり、皇居から遠ざかるブロックではすぐに電信柱が現れます。電信柱がないのは、皇居からワンブロックのみなのかもしれません。
写真を見ていただければよくわかると思います。このように東京の街並は電信柱天国なのです。もちろん、電信柱は「美観」をはかる象徴として取り上げたもので、電信柱があるからといって、土地の価格が下がるわけではありません。でも、写真でお見せした街並みに電信柱がなければ、もっと美しい街として、湯布院が努力しているように、更なる資産価値の向上が望めそうなのはおわかりいただけると思います。それこそ、高級住宅街といえるものでしょう。
1軒では限界のある資産価値の維持・向上
実は、高級住宅地だけに限らず、街並みの「美観」は住宅の資産価値に大きな影響を与えるのです。それは近隣に大きなマンションが建つことだけに留まりません。極端な話ですが、向こう三軒両隣に奇抜な色やデザインの家が建った場合でも、自宅の資産価値の下落に少なくない影響がでることもあるそうです。逆に、各々の家が敷地内に植栽を施し、手入れを怠らなければ、住宅街としての街並みはそれなりに美しいものになるでしょう。
そう、家の資産価値の維持・向上には、メンテナンスやリフォームだけでなく、その家が建っている街並みの「美観」が欠かせない要素なのです。これは1軒でできることではありません。
最近では、一部のハウスメーカーや不動産業者では、そういった「美観」まで配慮し、費用をかけて電信柱を地中に埋め込んだ「街」を開発・販売しているところもあります。また、意識のある人々が集まってある程度の規模の土地を共同で購入し「美観」に配慮した家を建て街をつくるという、コーポラティブハウスの「街」版みたいな活動を起こすことも、ひとつの手段として考えられることだと思います。
そういった街並みがどんどん増えてくれば、電信柱に無頓着な田園調布が高級住宅地ナンバーワンの地位から滑り落ちる日がくるかもしれません。