長期優良住宅/長く暮らせる家

長く暮らせる家は低価格で建てられるのか?(2ページ目)

快適性の高い高性能な住宅は、価格もそれなりに高価なものです。では、長く暮らせる性能を持ちながら価格の安い家を建てるには、どうしたらよいのでしょう? 住宅のどこにお金をかければよいかを考えます。

大塚 有美

執筆者:大塚 有美

長く暮らせる家づくりガイド


お金をかけるならこの3ポイント

躯体のどこにお金をかけるか、ポイントは3つ。まず耐久性のある構造にすること。次に高い耐震性能を確保すること。そして優れた気密・断熱性能を備えることです。

構造躯体が頑丈で長持ちすることは、長く暮らせる家の最も重要な条件。構造躯体が長持ちすれば、生活の仕方や家族構成の変化で間取りが合わなくなってきたときにリフォームすることも可能ですね。

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住宅性能に関わる3つのポイントにはお金を惜しまずかけたいところです
耐震性能については、震度6に耐えられる家なら安心できる?でお話をした通り、建築基準法を守るだけでなく、それ以上の性能がほしいところ。私は、住宅性能表示制度の等級2以上の耐震性能を確保したいと考えます。また、免震構造はとても高価になってしまいますが、可能であれば制震構造は採用したいところでしょう。

また、気密・断熱性能が高いことも重要なポイントです。こちらは、次世代省エネルギー基準が目安になると思います。気密・断熱性能が高い家ならば、家の中の温度差が小さく、一年中快適に暮らせるだけでなく、冷暖房効率もよいので経済的です。

この3つのポイントにおいて高性能な家なら、「長く暮らせる家」として長期間快適に暮らせる空間は確保できるはず。後は、予算と相談して設備機器類を選べばよいだけです。

設備だけでなく「広さ」にも注意

ただし、注意点もあります。それは、それぞれの設備のスペースと配線などです。

例えば、キッチンや浴室、トイレのスペースを後から広げようと思ったら、大掛かりな工事になり、費用が膨らむだけでなく、構造躯体によっては不可能な場合もあります。また、配線やエアコンのダクト用の穴なども、後から付けようと思うと面倒なうえ、意外と多額の費用がかかってしまうこともあります。

さらに、トイレ、廊下などに、後々手すりを付けたいと考えるなら、最初から壁の中に下地を仕込んでおくだけでなく、手すりを設置したときの有効幅を把握しておかなければなりません。手すりの分だけスペースが狭くなって、車椅子が使えなくなったという笑えない話もあるからです。

住宅の基本性能のレベルは落とさない

躯体はお金をかけても目立たないところです。性能の差は一見してもわからないので、法律をクリアしていればいいと思う人もいるでしょう。それに対して設備は、入居してすぐ目に付くところです。家を建てる前は、新しいキッチンや浴室を使用するところを想像して、大いに夢が膨らむのもよくわかります。

安価な建売り住宅などのチラシでは、採用されている最新設備の性能やカラーバリエーションの説明には大きくスペースを取りながら、耐震性能や気密・断熱性能についてはほとんど説明されていないケースも見受けられます。設備は大量に仕入れてコストダウンすることもできますが、躯体に関わる工事費は簡単にはコストダウンできません。建築費を安く抑えても、住宅の基本性能のレベルは落とさないこと、それが「長く暮らせる家」として大切なことなのではないでしょうか。そうすれば、ローコスト住宅とあまり大きく変わらない金額で家を建てることも可能だと思います。
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