土地活用のノウハウ/入居者ニーズとマーケティング

入居者殺到の3つの差別化!借入金10年返済が目標

土地活用のコンセプト作りで、成功したオーナーの事例を紹介。なぜ満室オーナーになれたのか?10年での返済を目標に、今も地道な努力を続けているそうです。

谷崎 憲一

執筆者:谷崎 憲一

土地活用ガイド

土地活用はセカンドライフを充実させる事業

主要駅から徒歩9分の好立地(写真はイメージです)

主要駅から徒歩9分の好立地(写真はイメージです)

土地活用する上でコンセプトの重要性について、基本的な考え方を紹介してきましたが、ここではそのコンセプトの立案に成功されている方の事例をご紹介します。

ご紹介させていただくのは、東京近郊の主要駅近くでマンションを建設され、現在満室経営をされているオーナーAさんです。

<物件概要>
スタイリッシュなデザイナーズマンション
鉄骨造4階建/全13戸
沿線/最寄駅:JR主要駅 徒歩9分

Aさんのマンションは、主要駅から徒歩10分もかからない便利な場所にあります。この駅は、JR線のターミナル駅の一つで、都心へのアクセスが良く、商業や経済の拠点となっている街です。駅周辺には、複数のデパートなど商業施設も充実しています。

オーナーの細やかな心配り

オーナーの細やかな心配り

Aさんは、土地活用に対して、しっかりとしたビジョンがありました。それは、「人任せではなく、セカンドライフを充実させるための事業」として、土地活用を「事業」とお考えになっていたことです。

その「事業」成功のためには、「事業」=「サービス業」と捉え、「入居者サービスの差別化」を真剣に考えようと決めました。まず、Aさんは建物のプランを考える上で、近隣の市場調査を行ったそうです。そこで見えてきたのは、この駅を活動の拠点として生活するシングル層の姿です。

ファミリー層は、いずれ自分の家を持つために引っ越すことが予想されます。また、同じシングル層でも、学生と社会人とでは生活サイクルが違います。学生が卒業してこの街から離れてしまうのに比べて、社会人の方が長く住んで貰え安定したニーズが見込めると判断し、Aさんは「シングルの社会人」をターゲットに絞ることにしました。

3つのコンセプトで差別化を実現!

Aさんは、近隣のマンションの特徴や、間取り、仕様、家賃について調査・比較してみることから始めたそうです。また、それと並行してオーナー向け勉強会などにも積極的に参加し、マンションのトラブル事例やマンション生活についての不満についても調べ上げました。

その結果、間取りについては、近隣の単身者向けの一般的な広さ「20平米未満」より広い26~28平米の広さの1DKにすることで、ゆとりの空間を提供することに決めました。

また、それに加えて、下記の3つのコンセプトを立て、競合物件との差別化をはかることにしました。

<コンセプト1>アートな空間づくり
エントランスホールにはアーティスティックな写真が並ぶ

エントランスホールにはアーティスティックな写真が並ぶ


エントランスホールに油絵や写真を飾り、ギャラリー的な空間を演出しました。入居者にゆとりと安らぎを感じて貰える空間を提供したいという強い思いがあってのことだそうです。

 
<コンセプト2>植栽の利用
エントランスの素敵な植栽

エントランスの素敵な植栽

商業や経済の拠点になっているという場所柄もあって、「緑豊かな」を コンセプトに、道路からエントランスまでのアプローチを植栽で彩り、道路から一歩マンションの敷地に入ったら別空間になるように設計。これも入居者に癒しの空間をと考えてのことです。

 
<コンセプト3>ブロードバンドに対応
ビジネスマンや若者にとってインターネットは当たり前の時代。古いマンションでは非対応のところもあるのでそこに目をつけました。最初から光ファイバー対応にすることで、手間がかからずに、良好な環境でネットが使えるようにしました。

そして、これら3つのコンセプトをマンションのプランに織り込みました。

さらにAさんは、各部屋の作りにもこだわりました。それがサービスにも繋がると考えたからだそうです。

Aさんこだわりの部屋作りで満室経営

Aさんは1~3階のフロアごとにイメージを変えました。

1階は、他の階にはない付加価値として、壁面の棚の取り付け場所が自由自在に変更できるようにしました。これは特に女性に好評で、防犯上や人の視線を気にする傾向が強い女性には敬遠されがちな1階も、すぐに入居者が決まるそうです。

2階は、若者向けにホワイトベースの床にし、キッチンはビビッドなブルーに仕上げ、ちょっと個性的な部屋に住んでみたいというニーズを叶えました。

3階は、床をシックなブラウン系にして、落ち着いた雰囲気の部屋に仕上げました。

また、Aさんは四季を通じて緑や花の手入れをし、入居者への素敵な癒しのサービスの一つとして提供しています。

「仕事から帰ってきてマンションに入ったら、癒しの空間が温かく迎えてくれる。そんなサービスを提供したい。大家業はサービス業なのだから、当たり前といえば当たり前のことですけど……」と、ご謙遜されますが、入居者をお客様と考えているからこそ、継続した満室経営が実現されているのだと感じました。

借入金の10年返済が目標

「入居者にとって築10年の物件は古いと感じる」というアンケートデータがあります。そこでAさんは、ローンを早期に完済させようと考え10年返済を目標にしています。また、長期にわたって堅実な安定経営を継続していくためには、入居者サービスについて常に問題意識を持ち、こまめに清掃・メンテナンスをしていこうと努めています。

また、Aさんは、土地活用を成功させるためには住宅メーカーの営業マンや不動産会社、リフォーム業者さんとのお付き合いの仕方も重要と語ります。

Aさんの土地は、当初、権利関係や上下水道などライフラインの敷設問題など様々な悩みを抱えていたそうです。しかし、住宅メーカーの担当者が誠実に対応し、一つ一つの問題に最適な専門ブレーンを紹介してくれ、問題解決に協力してくれたという経緯があります。

土地活用をする場合、ブレーン(良き相談者)の存在は欠かすことができません。それは住宅メーカーなのか、建設会社なのか、不動産会社なのか、コンサルタントなのかは、個々の案件に応じて見極める必要はありますが、上手に付き合うだけでなく、賃貸経営を始めた後も末永くお付き合いしていくことが重要です。

賃貸経営する上で、借入金返済に必要なお金を払ってくれるのは、お客様である入居者なのです。「その大切なお客様に喜んでいただけるような状況が作り出せているのも、よき相談相手があってのこと……」と語ってくれました。


※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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