なぜ設計図面が必要なのか?
土地活用において、口約束はトラブルの元。設計図面や交渉内容については書面で残しておくことが大事。
設計プランは、まず法令上の制限などを考慮して、敷地にどのようなボリュームの建物が可能か、またどのように配置するかを考えるところから始まります。接道、建ぺい率・容積率など諸々の法令上の制限の確認を行っていきます。
個人経営の工務店などの場合、口頭での約束が多かったり、きちんと書面が残っていないことがよくあります。「施主様のイメージ通りに造りますよ」と言われたものの、こちらのイメージするものとはほど遠い建物が完成したり、当初考えていた金額よりも高くなったというトラブルの相談が多いのも事実です。
設計上のトラブルが起こらないように未然に防ぐためには、話し合いの結果を互いに書面で残しておくことが大切です。特に賃貸住宅を建設する場合、入居者がその住宅内で生活を始めてから問題点が発覚することが多いので、改善を求める時点では既に工事代金を支払い、引渡しを受けてしまっているために結果的に泣き寝入りするケースもあります。
工務店などにプランまで任せる場合は、多少のコストをかけてもコンサルタントなど第三者のサポートを入れることにより、トラブルが発生する可能性が少なくて済みます。何よりも、賃貸住宅の入居者ニーズに明るい専門家に依頼するのが鉄則ですので、個人住宅建設のノウハウしかない工務店などは要注意と言えるでしょう。
いずれにしても、施主であるあなた自身が、設計図面の仕組み、設計図面の見方などについて、基本的事項ぐらいは勉強しておくべきでしょう。今回は、設計のポイントについてご案内します。
設計の流れについて
設計は、大まかな流れとして以下の通りとなります。1.基本計画(図面1~3枚ぐらい)
まず、敷地にあわせてどのようなボリュームの建物が可能か、どのような配置で建てるかを図面に反映させます。建物の大きさ(延べ床面積、階数、構造)、建物の配置(敷地に対しての方位や道路との関係)など配置図・平面図やイメージ図でまとめます。
この時点で、大まかな経験値としての建築コストはわかりますが、まだ、設備や仕様、グレードが分かりませんので、少し多めに予算を見込んでおいたほうが良いでしょう。
一般的には、ハウスメーカーの場合は、概ね1週間ぐらいでコンピューターで自動計算した計画図が出来上がり、無料で提案されることが多いようです。
2.基本プラン(図面5~10枚ぐらい)
基本計画を元に、エントランスや避難通路など共用部分の配置や部屋数、各住戸の間取りなど、コンセプトを意識して形にしていきます。
設備仕様については、エアコンの設置台数、キッチンの設備・グレード、浴室設備としての乾燥機や追い焚き機能、オートロックなどのセキュリティー機能の検討など、どれくらいのレベルの設備を導入するのか、事前に明確にしておくことが大切です。
また、立地条件や募集する入居者によって、広くゆとりがある間取りのタイプにするか、小型の単身者にターゲットを絞った間取りのタイプにするのか、またディンクス(DINKS 子どものいない共働き世帯)を狙うのかでも設備や仕様が違ってきます。賃貸住宅としてトータルバランスが取れるよう、ミスマッチな部分がないか、検証が必要となります。
大手ハウスメーカーであれば、長年の実績に基づいた賃貸住宅のノウハウがデータとして蓄積されていますので、かなり的確なアドバイスが貰えるでしょう。多くのハウスメーカーは、自社内に賃貸管理部門を持っており、入居者ニーズを的確につかんでいるので、的外れの提案が出てくる危険性は少ない傾向があります。
ただし、たまたま的外れな営業マンに出会うこともありますので、わかり易く納得のいく説明をしてくれる人かどうかは、皆さんの判断によります。
3.実施設計図(構造計算書など、規模により図面30~200枚)
基本プランで決定した内容(意匠、構造、設備等)を、間違いないように図面に落とし込む作業です。ここに至ると、完成した図面を修正することは大変な作業になりますので後戻りすることが難しくなってきます。
やはり、基本計画・基本プランの段階が最も重要と言えます。
図面の種類と注意点
図面は種類も多く難しそうに見えますが、建物を造る上で重要な情報が満載です。ここでは、図面を見るコツを覚えてみてください。前述した通り、図面には大きく分けて基本計画・基本プランと、実施設計図とがあります。
基本計画・基本プランは、主に意匠(※)と建物の配置、各階の平面図が描かれています。親切なところでは立面図も出てきます。皆さんも見る機会が多い図面です。
(※)意匠とは、建築物の各部の構成、外観の状態および材質、デザインなどの指示を具体的かつ詳細に示してある図面を言います。
■配置図:敷地の中に建物全体を配置したもの。車庫、庭、避難通路などのスペースと位置、全体のバランスを考慮した建物の配置などの検討資料となります。
■平面図:基本的な各階ごとの部屋の大きさがわかります。親切なところは間取図まで出てきます。柱や壁、窓、ドアの位置などが表現されています。部屋の配置や大きさ、賃料の取れる部分と共用部分などをチェックします。
■立面図:東西南北それぞれの方向から見た建物の外面が書かれています。この図面から、屋根の形、窓やバルコニーの位置と大きさなどを確認します。
次に、実施設計図ですが、そこでは詳細の「基礎や構造」や「設備」「仕様」を表現しており、基本図面・基本プランに基づいた図面で、実際の現場で現場監督や職人さん、設備屋さんが決められたスケジュールに従い、図面通りに建物を造っていきます。
構造図とは、基礎や床、柱、梁など構造計算に基づいた図面で、素人が見てもなかなか理解しにくいものです。以前起きた耐震偽装問題から、非常に厳しいチェックが行われるようになりましたので、今はそれほど神経質になる必要ないでしょう。
また、設備図は意外と重要です。電気設備、給排水衛生設備、空調や換気設備など細かく書いてあります。ここは、理解できるまで質問してもいいポイントです。
設備仕様書は、具体的に照明器具、キッチンやお風呂の種類や大きさなどのリストであり、建物のグレードを表す見逃せない部分ですので、必ず納得できるまで、細かく説明を受けてください。
建築工事請負契約は実施設計図を基に行いますので、後々のトラブルを避けるためにも、大変ですが細かくじっくりと説明を受けてください。特に、口約束はトラブルが発生した場合、何の証拠も残ってないので書面に残してもらうようするのが基本です。きっちりした建築会社では、打ち合わせ内容を複写紙で記録し、控えをお客様に交付してトラブル防止に努めています。
最終図面が出来上がれば、いよいよ契約、そして工事着工へと進みます。