
仕事でさまざまな素敵なご夫妻にお会いしますが、その中で最も印象的だったのがこのご夫妻です。お打ち合わせ一番最初に出てきたご主人の言葉が 「生活感のない空間を創ってほしい!」でした。その言葉に驚くと共にデザイナー冥利に尽きると、力を入れて楽しませていただいた家造りでした。世田谷の静かな街を走る電車「東急大井町線」の小さな駅から数分の所に建てられています。
ご夫妻のご希望はホテルのような空間、床は大理石、キッチンはイタリアンレッドなどさまざまな夢が語られました。ただし、あまり広いとは言えない敷地にご予算も限られたものでした。お二人の要望をかなえるためのプランは、一階には玄関や廊下などのパブリックのスペースを極力おさえたオープンなプラン、二階には寝室、子供部屋、浴室などのプライベートゾーンになっています。


この家、超豪華にみえるインテリアですが、さまざまなところで予算調整をしています。リビング・ダイニングの床は大理石に床暖房を設えています。実は予算オーバーでイタリア製のタイル貼りになっていたのですが、仕様決めの時、奥様の 「腐っても鯛と言うけど、腐っても大理石、やっぱり床材は大理石がいいなァ」の一言で大理石が復活したものです。
ただし、工事費削減のためペルシャ絨毯の下は床暖房にコンパネだけにしています。(大理石は高価なので一枚でも少なくしたい。)これは、平面プランが決定する前に、リビング・ダイニング全ての家具を決めていましたので、家具のレイアウトがプランの中にしっかり組み込まれていることで可能になります。その他にも壁は漆喰塗りですが、天井はビニールクロス貼りにしています。(天井は目線からはずれていますので、漆喰と同じようなクロスを慎重に選ぶと、違う材料を使っていることに気が付きません。)
もちろん予算のしわ寄せはカーテン工事にも及んでいます。レースは取り止め、コットンのプリント生地でシェード仕上げにしています。(シェードすると生地の用尺が少なく割安になる)、手前のドレープは動きません。室内を濃いブルーのカラーで引き締めるために、ポイントカラーとして使っていますので、固定されています。(節約のため生地巾だけでデザインしています。)
いかがですか、こんな仕掛けをしながら、予算内で精一杯にお客様の夢を実現することがデザイナーの喜びになります。どうぞ家を建てる時は、精一杯あなたの夢を語ってください。
もちろん、奥様の夢「イタリアンレッドのキッチン」も実現しました。これはキッチンメーカーと細かい打ち合わせをしながら、いかに安い価格でつくることができるか再検討、あらゆるくふうを凝らしたものです。このキッチンの詳細は、「キッチンはイタリアンレッド!」の記事でご覧いただけます。
「キッチンはイタリアンレッド!」はここで!
■建築デザイン:デザイナーズ共プロ 江崎溥
インテリアデザイン:菅野民子
(C)November.2003 Copy & Photo by kanno
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