不動産の売買契約書や領収書などに収入印紙が必要なことは、多くの人が知っているでしょう。しかし、印紙税法による細かな規定についてはあまり知られていないかもしれません。そこで今回は、印紙税に関する「基礎知識」とともに「雑学的な知識」を解説することにします。
なお、印紙税について詳しくは ≪住宅購入時の印紙税について知っておこう≫ をご覧ください。
印紙税の課税文書は?
不動産の売買契約などにはいくつかの文書が付随します。その中で印紙税が課税される主な文書は、売買契約書、金銭消費貸借契約書(住宅ローンの契約書)、建築工事請負契約書、売渡証書、領収証などです。ただし、一般個人が受け取る金銭(営業目的でない金銭)に関する領収証は課税対象になりません。
媒介契約書や重要事項説明書などは非課税文書ですが、「不動産購入申込書」の場合には注意が必要です。
その「申込書」が単純に購入意思を表示するためだけの文書なら非課税ですが、その申込みに対する販売会社の承諾事実を証明する意図のもので、かつ申込者が保存する文書は課税文書として取り扱われます。
「後で正式な領収証を発行しますから」と言いながら名刺の裏などにサインをして、仮の領収証をお客様に渡す営業担当者がいるかもしれませんが、仮の領収証であっても領収事実を証明する目的のものであれば立派な課税文書です。
また、不動産の売買契約において一般的に「仮契約」は存在しませんが、もし仮契約署があるような取引であればこれも同様に課税文書となります。
印紙税の納税義務者は?
領収証の場合には金銭を受け取った側が「単独納税義務者」となりますが、売買契約書では売主と買主が「連帯納税義務者」となり、たとえば売主が印紙税の納付を怠った場合には、買主も連帯して責任を負わなければなりません。ただし、あくまでも「法的にいえば」という話であり、実際にそのようなケースで買主が罰せられたという事例はないでしょう。
なお、売買契約書の中に「印紙税を売主と買主がそれぞれの責任で負担する」という条項があったとしても、それは当事者間の問題に過ぎず、印紙税法上の連帯責任は変わりません。
また、仮に売買契約書を3通作成したときにはその3通すべてが課税文書となりますが、そのうちの1通を媒介業者などが所持する場合でも、税法上では3通分すべての納税義務者が売主と買主になります。
消印によって納付とみなされる
印紙税は、印紙税額に相当する収入印紙を課税文書に貼付し、印章または署名などによる消印をすることで、初めて納付したものとみなされます。もし、収入印紙が貼ってあってもそれに消印がされていなければ、印紙額面と同額の「過怠税」が課せられることになります。これで実際に罰せられた例も聞いたことはありませんが、収入印紙を剥がして再利用されることを防止するための規定でしょう。
収入印紙を貼らないと……
課税文書に収入印紙を貼らなければ、本来の印紙税額の3倍相当の過怠税が課せられます。ただし、税務署などから指摘を受ける前に「貼りませんでした」と自主申告をすれば、1.1倍相当の過怠税に軽減されるようです。≪印紙税に関するその他の規定…次ページへ≫