不動産売買の法律・制度/不動産売買の法制度

情報収集・物件見学~住宅購入の流れ・手順 4

住宅選びの前準備が整ったら、いよいよ本格的に物件情報収集を始め、気になる物件があれば見学に出掛けます。情報集めから見学までの段階における注意事項やポイントなどをまとめました。(2017年改訂版、初出:2005年2月)

執筆者:平野 雅之


住宅購入に向けて資金計画を入念に確認し、住宅選びの前準備が整ったら、いよいよ物件探しを始めることになります。

予算や立地、広さなどさまざまな条件に当てはまる物件をピックアップするわけですが、自分が希望するすべての条件を十分に満たす物件はほとんど出てこないかもしれません。広告などの表記だけでは、条件に合致しているのかどうかが判断できない物件も少なからずあるはずです。

だからといって、すべての物件情報を切り捨ててしまう必要はありません。数多くの物件をピックアップし、自分の諸条件に少しでも近いものを選び出していけば良いのです。

また、広告紙面などで見るのと、現地で見るのとではまるで印象が違う物件もありますから、自分の思い込みだけで除外してしまうと失敗することも考えられます。少しでも気になる物件の資料は手元に残しておくようにしましょう。


物件情報の収集

パソコンを使う女性のイラスト

インターネットの普及により物件情報収集の方法も様変わりしてきた

物件のアテも何もないまま見ず知らずの不動産業者に、いきなり「何かありませんか?」などと飛び込む人はいないでしょう。

知り合いの不動産業者に依頼するような場合は別として、まずは物件情報を集めないことには何も始まりません。

以前は最初に住宅情報誌で物件を探すのが定番だったでしょうが、ここ数年でインターネットが急速に普及していることはご存知のとおりです。物件探しの手段としてもネットが重要な位置を占めるようになっています。

ある大手媒介業者の営業担当者に話を聞いたところ、「お客様からの問い合わせはネット経由のものばかりで、チラシの問い合わせはほとんどない」ということでしたが、それはさておき、媒体ごとの注意点やポイントを挙げておくことにしましょう。


【インターネットのwebサイト】

インターネット上の物件情報掲載サイトには大きく分けて、物件検索専門サイト、不動産業者のサイト(数社による合同サイトを含む)、新築分譲物件の単独サイトの3つがあります。

ここで注意したいのが物件情報の更新頻度です。

新築物件の単独サイトでは完売になれば閉鎖されるケースも多いのですが、不動産業者のサイト(とくに中小業者の1社単独サイト)の中には定期的な更新が行なわれず、既に売却済みとなっている物件がいつまでも掲載されているような場合も見受けられます。

さらに、そのようなサイトでは広告の表示基準を満たしていないところもいくつかあるようですから、十分な注意が必要です。

また、物件検索専門サイトでは定期的な更新が行なわれているとはいえ、物件登録作業などが不動産業者ごとの直接操作に依存しているような場合には、成約物件の削除が適切に行なわれていないケース、誤った物件情報(ケアレスミスによる誤記だけでなく、悪意ある偽情報も)が登録されているケースなどもないわけではありません。

いずれにしてもインターネットの世界は玉石混交です。成約情報を即座に反映する不動産業者のサイトがある一方で、1年以上もまったく更新していないようなサイトもあります。サイトの特質や物件情報の鮮度を見分ける目も必要でしょう。


【住宅情報誌

地域の物件を掲載した住宅情報誌はいくつか刊行されていますが、新築分譲物件の比重が重くなり、中古物件の情報が少なくなってしまっている場合もあります。

物件情報以外に住宅購入に役立つ特集記事やノウハウなどが掲載されているものなら、物件探しの間だけでも続けて購読すると結構役立つでしょう。終わった後でまとめて古紙回収に出すのがちょっと面倒ですが……。


【折込みチラシ】

週末にもなれば新聞にどっさりと広告チラシが折込まれていて、用のない人には迷惑でしかないのかもしれませんが、地域に合った情報が勝手に届くのですから、住んでいるのと同じ沿線で物件を探す人にとっては便利でしょう。

新聞の折込みチラシ

毎週末には大量のチラシが折込まれていて、チェックするのも大変!

新築分譲物件のチラシは大判のものが多く、掲載されている内容も多岐にわたりますが、見た目の豪華さに惑わされないようにしなければいけません。

気になる物件のチェックは、まず物件概要欄から始めますが、詳細に読んでいくと思わぬ文言にぶつかることもあります。

ひとつのチラシの中に多くの媒介物件が掲載されたもの(1社の単独チラシまたは数社合同による集合チラシ)は、個々の物件の情報量が少ないことが難点かもしれません。

また、原稿作成から実際の折込みまでのタイムラグもあるため、折込まれた時点では既に売却済みとなっているケースもあり得ます。

かつて物件の動きが早かった時期には、「優良な物件をチラシに掲載すると、ユーザーへ届く頃には売れてしまい、逆にオトリ広告と誤解される」というジレンマもありました。

「問い合わせをしたらすでに売れていた=悪質業者」のような短絡的な発想で不動産業者を批判する人もいますが、すべてがそうだとはかぎらないのです。

また、小さめの用紙に1物件だけを掲載したチラシ(単チラ)もあり、新聞折込みだけでなく郵便受けに投函(ポスティング)されていることもあります。

このようなチラシは地域性が高く、また(すべてではありませんが)前記のようなタイムラグも少ないため、新鮮な物件が掲載されていることも多いようです。

ただし、コピー機、プリンタ、輪転機などを使用して社内で作成されたチラシは、第三者によるチェックが行き届かないぶん、残念ながら広告の基準を満たしていないものもいくつか含まれています。

とはいえ、このようなチラシの手間を掛ける(営業担当者個人の労力負担が大きい)物件にはそれなりの理由も考えられます。価格を思い切って下げ、一気に売りたいという意図を持っているようなケースもあるでしょう。


【新聞広告】

新聞折込みではなく、紙面に印刷されている広告も多いものです。しかし、その多くは単色刷りのうえ、物件概要欄などの文字が小さくて読むのに疲れてしまうこともあるでしょう。

読んでいるうちに、どの行だったか分からなくなってしまったり、1行ぶん飛ばしてしまったりすることもありますから、これを真剣に読もうとするときには、定規を用意しておくと良いかもしれません。

紙面の数段を使った新聞広告ではかなり詳細な情報も入手できますが、最小枠の広告をいくつも掲載しているような特集欄では、逆に情報量が少なすぎて困ることもあるでしょう。専門用語を略して記載している場合もあるので、正確に読みこなすにはある程度の知識も必要です。


【捨て看板など】

街なかの電柱などにくくりつけられた看板を「捨て看板」(ステカン)などともいいますが、改めていうまでもなくこれらは違法です。

この場合、掲示すること自体が違法なのですが、仮に掲示には問題がなかったとしても、広告の基準を満たしているものはほぼ存在しません。電柱などに貼り付けられたビラ(電ビラ)などについても同じことです。

電柱に貼られた捨て看板

違法な捨て看板がなくならないのは困りもの

業界団体の中でも自主規制委員会などを設けて取り締まっているのですが、それでも捨て看板などがなくならないのは、それを見て不動産業者へ問い合わせをするユーザーが多く存在するからにほかなりません。

といっても、ユーザーに責任転嫁する意図はまったくありませんから誤解されると困るのですが、捨て看板などに対して誰も問い合わせをしなくなれば、やがては自然消滅するのでしょう。

あるとき、某業界団体の支部で自主規制委員を務めて(捨て看板などの取締りをして)いる人の経営する不動産業者が、自ら捨て看板をつけて回っていたとして、団体内部での告発騒ぎもありました。立場が変わってもやめられない業者が存在するのは残念です。

いずれにしても、捨て看板などを見て勝手に想像を膨らますと、そのギャップに驚くような物件が多いことも事実ですから、安易に問い合わせをすることは控えましょう。

物件広告で違反行為をする会社が、その後の営業や契約行為では遵法精神に則って活動するかどうか、冷静にご判断ください。


物件の問い合わせや見学の際のポイント…次ページへ

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