≪共有名義と共有持分のポイント〔前編〕≫ では、その基本的な考え方などについて説明をしましたが、なかなか簡単には判断できない場合も多いでしょう。
今回は、当初の予定と違ってしまったケースや、変則的なケース、親から援助を受けたときの対応方法などを整理し、最後に共有名義のメリットとデメリットをまとめておくことにします。
返済途中で負担割合が変わってしまったとき
住宅ローンの返済比率をもとに共有持分を決めるといっても、それはあくまでも予定に過ぎません。夫と妻のどちらかが失業したり、収入が激減してしまったり、あるいは妻が出産・育児などで仕事を辞めることもあるでしょう。負担割合が変わっても、ある程度の範囲内なら大丈夫!
しかし、それが贈与税の基礎控除額(110万円/年)以内であれば、とくに問題はありません。
1年間に110万円ですから、月額にして92,000円弱が本来は妻の負担予定分だったとしても(他の贈与が重ならないかぎり)贈与税を心配する必要はなく、登記した共有持分を変えることも考えずに済みます。
返済途中で負担割合を任意に変えても考え方は同じです。もっとも110万円という基礎控除額がこれからもずっと維持されるかどうか分かりませんが……。
ただし、当初からすべて夫が負担するつもりでいながら、贈与税の基礎控除額をあてにして妻の共有持分(年間110万円以内の住宅ローン返済額に相当する共有持分など)を入れたような場合には、「初めからその持分すべてを贈与する意図だった」とみなされて、まとめて贈与税が課税されることもあり得ます。
あくまでも「本来は妻も住宅ローン返済の負担をするはずだったが、やむを得ない事情で妻が負担できなくなった」などの理由が明確でなければなりません。
住宅ローンの借り入れ名義と返済負担が異なるとき
夫と妻がお互いに連帯債務者として住宅ローンを借りるか、あるいはそれぞれの名義で別々の住宅ローンを借りれば、共有持分の考え方は比較的分かりやすいものです。しかし、住宅ローンは夫の単独名義で借りながら、その返済は夫と妻がともに負担するケースもあるでしょう。このような場合には、住宅ローンの借り入れ名義にかかわらず、実際の負担(予定)割合をもとにして共有持分を定めます。
ただし、夫はその持分に応じて住宅ローン控除の適用額が少なくなる場合があるほか、妻は住宅ローンの借り入れ名義がなく金融機関から年末残高証明書の交付を受けられないため、返済負担をしても住宅ローン控除の適用自体が受けられません。
もっとも、このようなケース(住宅ローンは単独名義、物件は返済負担割合による共有名義)は金融機関が認めず、連帯債務による住宅ローンなどに差し替えられる場合もあるでしょう。
住宅ローンの融資が実行される頃になって共有名義を申し出れば(通常は決済時に、登記申請の手続きと並行して融資の手続きも進められます)、最悪の場合には融資が中止されたり債務不履行の問題が生じたりすることも考えられます。
いずれにしても共有名義にするのかどうかは事前に決め、住宅ローンの審査を申し込む時点でそれを金融機関に伝えるようにすることが肝心です。共有持分の割合をどうするかで困ったら「金融機関の担当者に相談する」ということにしておけば、問題が起きることは少ないでしょう。
土地の共有持分と建物の共有持分は同じにする?
新築マンションの場合にはたいてい敷地権の登記がされ、土地と建物の共有持分をそれぞれ異なる割合にすることはできません。中古マンションの場合も同様に、異なる共有持分にすることはできない場合が大半です。一戸建て住宅なら、土地と建物の共有持分割合を変えることもできる
しかし、いずれの場合でもそれぞれの持分による価格の合計割合と購入資金の負担割合が一致するようにしなければなりません。
また、その前提として土地価格と建物価格を明確に分けなければならないでしょう。
ただし、売却するときのことや将来起こり得るさまざまなケースを考えれば、土地と建物のどちらか一方だけが単独名義というのは、想定外の不利益を被ったり面倒を生じたりすることにもなりかねません。
必ずしも共有持分の数字を同じにする必要はないものの、共有名義にするのであれば土地と建物のどちらも共有名義にしておくほうが無難です。
土地を先に購入する場合は要注意
土地を先に購入して、後から注文住宅を建てるような場合には注意が必要です。土地を購入して所有権移転登記をするとき、あまり深く考えずに単独名義にしてしまい、建物が竣工して所有権保存登記をするときに細かく計算してみたら数字のつじつまが合わなかった、などということがないようにしなければなりません。
土地代が自己資金で間に合うようなときには資金計画を煮詰めるタイミングが遅くなりがちですが、共有名義を考えるのであれば、事前にしっかりと確認をしておくことが重要です。
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