不動産売買の法律・制度/宅地建物取引業法詳説

宅地建物取引業法詳説 〔売買編〕 -6-

宅地建物取引業法のなかから「一般消費者も知っておいたほうがよいこと」などをピックアップして、順に詳しく解説するシリーズ。第6回は「無免許営業の禁止」および「名義貸しの禁止」について。

執筆者:平野 雅之


宅地建物取引業法詳説〔売買編〕の第6回は、第12条(無免許事業等の禁止)および第13条(名義貸しの禁止)についてみていくことにしましょう。

 (廃業等の届出)
第11条  (宅地建物取引業の廃業手続きなど・・・省略します)
 
 (無免許事業等の禁止)
第12条  第三条第一項の免許を受けない者は、宅地建物取引業を営んではならない。
 第三条第一項の免許を受けない者は、宅地建物取引業を営む旨の表示をし、又は宅地建物取引業を営む目的をもつて、広告をしてはならない。
 
 (名義貸しの禁止)
第13条  宅地建物取引業者は、自己の名義をもつて、他人に宅地建物取引業を営ませてはならない。
 宅地建物取引業者は、自己の名義をもつて、他人に、宅地建物取引業を営む旨の表示をさせ、又は宅地建物取引業を営む目的をもつてする広告をさせてはならない。
 
 (国土交通省令への委任)
第14条  (免許に関する手続き上のことなので省略します)

免許がなければ営業できない

宅地建物取引業法の第12条と第13条では、無免許で宅地建物取引業を行なうこと、および免許の名義を第三者に貸すことを禁止しています。

無免許営業に関しては、実際に不動産の取引をすることはもちろん、宅地建物取引業者であるかのような表示をしたり、取引の目的をもって広告することも禁止されています。これは名義貸しの場合でも同じです。

正規に宅地建物取引業の免許を申請している業者であっても、実際に免許証の交付を受けるまでは、一切の営業活動ができません。

  無免許の業者(法人または個人)は、「宅地建物取引業者」とはいいません(第2条)。

ちなみに、タウン誌などの地域情報誌に不動産の広告を掲載したものの、物件を担当する宅地建物取引業者の連絡先が記載されず、その広告会社へ消費者からの問い合わせが直接いくスタイルとなっていたために、無免許営業とみなされた事例もあるようです。

「名義貸し」とは、免許のないA社(法人または個人)が、免許を受けた宅地建物取引業者B社(法人または個人)の名義を使って営業をするような場合ですが、B社の免許を借りたA社が「本当はA社だ」などと名乗るはずもなく、もしこのような事例があっても、一般の消費者がこれを見抜くことは困難でしょう。

たとえば、宅地建物取引業者B社(代表取締役C)の実質的な権限をA(役員や契約締結権限を有する使用人などとしての届出はない)が握り、営業もAが取り仕切っている(Cには経営上の権限などがない)ような場合も「名義貸し」に該当するものとされていますが、売買契約書や重要事項説明書などには「宅地建物取引業者B社(代表取締役C)」とだけ表示されていたり、「営業部長A」などと名乗っていたりすれば、消費者にはその実態が分かりません。

代表者自らが営業を担当したり契約に立ち会ったりするような、小さな会社のほうがかえって安心かも…?

免許に対する誤解もある?

もうずいぶん前のことになりますが、分譲住宅や分譲宅地の売主には免許がなくても「宅地建物取引業者が販売代理や媒介をすれば問題ない」と誤解をしている宅地建物取引業者に会ったことが実際にありました。

また、千葉県内のある地主(免許なし)が、自分の所有地を数区画に分割して一般消費者を相手に売却しようとする新聞折り込みチラシをみたこともあります。このときも(記憶によれば)「媒介」として宅地建物取引業者の記載がありました。

このような場合でも、売主には宅地建物取引業の免許が必要で、そうでなければその売主は無免許営業です。また、売主の無免許営業に関与した宅地建物取引業者は処分の対象となります。

  地主が自らの土地を切り売りするような場合、1区画だけ、1回かぎりであれば、宅地建物取引業には該当しません。また、数区画であっても1つの相手先(または特定の相手先)にのみ売却するのであれば免許は不要です。免許が必要かどうかは、その反復継続性や売却先(買主の募集対象)が不特定多数かどうかなどによって判断されるのですが、たとえば地主が数年おきに1区画ずつ売却する場合にはどうかなど、あいまいではっきりとしない部分もあります。

「分譲売主には免許がなくても、宅地建物取引業者が販売代理や媒介をすれば大丈夫」などと誤解した宅地建物取引業者は、いまはもういないことと思いますが…。

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