建築家・設計事務所/建築家住宅の実例

経堂の杜―チームネットの挑戦 環境共生住宅って何だ?(2ページ目)

環境装置によって暑さ寒さを調節する住宅ってどんなものだろう? ほんとに快適なのか? 36度を記録した炎天下の8月、経堂の杜を訪ねてみた。

執筆者:坂本 徹也

それだけではありません。建物の内部には風の通り道をきちんと確保し、壁の内部には空気の循環路をつくって、あたたまった空気を外に逃がします。その上でペアガラスや断熱材を使って高気密高断熱を実現するそうです。

「昼は窓を開けないんです。いまも全部閉めてます。昼間開けると外気が家の中をあたためてしまう。だからそこは割り切って、風が必要だったら扇風機を使います。扇風機はエアコンの100分の1ぐらいの消費電力で済みますから、5~6台かけても全然安上がりですよ。そして逆に、次の日のために夜の間に冷気を仕組む。夜は窓を開けるんです。ここはコンクリート造ですから、夜にためこんだ冷気が長持ちする。それを扇風機でまわすので、けっこう涼しい。洞窟の中にいるような快適さでしょ?」(甲斐さん)

 
甲斐さんの自宅は、チームネットの地下の部分にありますが、そこは外部の影響を受けにくいせいかさらに涼しく、エアコンのように寒すぎない快適な涼感が得られました。人間の身体には「季節感」というセンサーがあって、外が33度あれば33度にあわせて身体を適応させていく。だから室内が外よりも3度低い30度であれば、かなり涼しく感じられるのだそうです。

しかもそれは一戸建てではなく、集合住宅としてつくることで、さらに効果を上げていくことができる。緑のボリュームにしても、風の抜け道にしても、壁の空気の循環路にしても、必要な装置を共有することで効率的にもなるし、規模が大きければそれだけ効果も大きくなります。またそこには同じコンセプトに共感し、同じ価値観を持つ人びとが住むということで、より理想的なものを追求していけるという「価値」も生まれるでしょう。 甲斐さんは、経堂の杜に続いて、同じく環境共生型コーポラティブハウスの「松陰エコビレッジ」の開発に携わっていますが、そこでもこの価値(ベネフィット)を頭に置いたコミュニティ・ベネフィットの考え方を推進しているそうです。どんなものが出来上がってくるのか、楽しみですね。
 
甲斐さんは言います。
「僕はコーポラティブハウス事業をやりたかったわけじゃないんですね。ただ、個人レベルではできない、一戸建てではなかなか実現しにくい環境ポテンシャルを、どうやって手に入れるかを考えたときに、コーポラティブハウスが一番合理的だったと。

しかし、それは一戸建てでは実現不可能かといえばそうじゃない。環境共生のコンセプトをしっかり把握していさえすれば、小さい領域でもそれは十分できる。環境共生型のすごく快適な家ができるはずだと思います」

チームネットでは、そうした環境共生住宅をめざす建築家や建て主に向けて、アドバイスやプロデュースを行っているとのことでした。

チームネット:http://www.teamnet.co.jp/teamnet/home.html

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