環境装置によって住まいの暑さ寒さを調節する、
経堂の杜の実験はちょっと革新的!
チームネットは、経堂の杜プロジェクトを立ち上げたプロデュース会社で、建 築家や工務店やメーカーが質のよい住宅をつくるためにひとつのチームとして結束することから名付けられたそうです。
甲斐さんは、かつて日本マーケティング研究所に勤務し、建材メーカーと組んで高性能住宅の開発の仕事をやっているうちに、環境共生住宅の必要性にめざめ、それをライフワークにしてしまった人です。
「デザインやビジュアルだけを優先した住宅を見ると、軒も出ていなかったりして、すごく閉鎖的なものになりつつあるように思うんです。ほんとに形だけみたいなね。そういう家を高気密高断熱にして性能を上げていくと、かえって失敗したりする。風が全然抜けなかったりして、暑くて暮らせない。そこでもう一度、当たり前のように風が抜ける家、建物自体が熱や日差しをちゃんとコントロールする家とは何かを突き詰めて考え、自然の力で室内を快適にするパッシブデザインというものに行き着いたんです」(甲斐さん)
たしかに高性能の家は、閉じこもってしまう冬にはよくても、夏場をどう過ごすかという大きな問題を抱えていることに気づいたわけですね。そしてさらに、パッシブデザインをより有効にするために、外にある環境ポテンシャルをどう生かすかを考えていきました。その回答が環境共生住宅だったということです。経堂の杜は、そうした甲斐さんのコンセプトを具体化した環境共生型のコーポラティブハウスです。
驚いたのは、チームネットのドアを開けた瞬間、ひやりとした冷気を感じたことでした。甲斐さんは言います。
「それはここの室内が外とくらべて3~5度低いからですよ。ここにはエアコンというものはないので、自然の力だけでコントロールしています。いろいろありますが、一番大きいのは外の路面の輻射熱が室内に入ってくるのをどう防ぐかですね。簡単に言うと、緑のカーテンによって水のバリアを張りめぐらせたということ。植物の中には水が流れてますから、それが輻射熱を遮断すると同時に冷気を運んでくる。日射が強ければ強いほど葉っぱは水を必要としますから、どんどん地下から水を吸い上げますよね。それが気化するときに気化熱を放出する。周囲の空気から熱を奪うわけです。打ち水の原理ですね」
たしかに大きな木の下に立つと、ひやりとしたものが降りてくるのを感じるときがあります。甲斐さんいわく、植物は巨大なポンプであり、さらに葉っぱの一枚一枚は熱を冷気に変える変換装置だというわけです。ここではそれを最大限に活用したということでしょう。
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