“デ・ジャヴー”を感じさせる
納谷さんの集合住宅は、未来の記憶?



中野区新井、中野通りの桜並木を抜けてしばらく行くと、納谷学+納谷新のコンビによる新しいデザイナーズマンションがあります。地上6階、通りに面してはそのほとんどがガラスの開口部、裏手は鳥籠のような金網を階段部に張りめぐらせたコンクリートの固まりといった表情。そう聞いただけでは、周囲の新井薬師の町並みにはたして合うのかなと心配になってしまいますよね。

ところがところが、これが不思議に周囲の風景にマッチ。この建物は、すごく斬新なファサードでありながら、いつかどこかで見たような古い建物の趣を持ってるんですね。かつてはこうした表情を持った建物が、ドイツとかアメリカの大都市にあったような気がします。斬新だけどどこか懐かしい“デ・ジャヴー”を感じさせるのは、この建物の意匠がそのあたりを意識してつくられたからでしょうか。

エントランスには、例によってユニークな郵便受け。このあたりから、すでにデザインの遊びがいっぱいです。中は1階にお店が1軒と、あとはメゾネット7軒にワンルームが12軒の賃貸住宅、それに5~6階部を使ったオーナーの住宅という構成。とくにオーナーの2世帯住宅部分は、貸室と貸室との間に子世帯のリビングを設けて一部メゾネットにしたりと、かなり大胆な発想でつくれらており、見ていて「ああ、なるほどなあ」と感嘆させられます。

オーナー宅は最上階の魅力をふんだんに生かした遊び心いっぱいの住空間です。玄関を入るとフロストガラスの向こうがバスルームになっていますが、これがけっこう近未来的なお風呂。手前がパウダールーム、テラスに面したタイル張りの部屋にバスタブがぽんと置かれています。

玄関から左手が親世帯、右が子世帯のスペースで、このバスルームだけが共通の緩衝地帯というわけですね。親世帯の部屋は全面開口のテラス付きのリビングに、畳の部屋を組み入れたシンプルな構成。畳の部屋にふとんを敷いて寝れば、あとは大きなリビングがすべてを兼ねるということです。

 

いっぽう、子世帯の方はといえば、入ってすぐが予備的な空間。ここから隣り合わせにある寝室と、階下のリビングへと降りていく階段に分かれます。階下は吹き抜けのあるリビングと、客室(子ども部屋)とキッチンがあります。道路側は東になるようですが、こちらは全面、2層分の大開口部。かなり暑そうですが、そのへんはエアコンで強制的に調整するのでしょう。それにしても納谷さんの吹き抜けの使い方はすごい!

次ページは賃貸スペースです。