大きな箱が宙に浮いている 浮くというより突き出てきた感じ 横浜に続き年末にオープンハウスが行われた、手塚建築研究所の「弦巻の家」を見学してきました。手塚さんは弦巻の家を称して「南北に開口を持つ大きな箱が宙に浮いている家」と書かれていますが、その言葉のとおり、南側からこの家を望むと、大きな箱がぽっかり浮かんでいるように見えます。 手前の1階部分が柱のない駐車場で、そこに凹があるのと、その上に乗っかる形の2-3階部がシンプルな箱状だからなわけですが、じつはこの箱の中身のほうがさらに「宙に浮く」感覚を味あわせてくれるとは思いもよりませんでした。 入り口は建物の横(西側)にあり、そのことも南側から見たときのイメージを「箱」に近く見せています。入ってすぐ左手にあるのが寝室、いきなりプライベート空間ですが引き戸で仕切れるようになっています。階段下にはトイレとウォークインクローゼットがあります。 階段を使った収納部が美しい 奥にはクローゼットも… 間取りだけ説明しておきますと、2階には階段を挟む形で、収納付きの個室(北側)とLDK(南側)があり、さらに3階に上がると主寝室があります。おそらく大家族で住まわれる住宅なのでしょう。バスルームは2階の個室側に1箇所。2階の北側にはテラスが設けられ、そこから裏庭に直接出ることができるようになっています。 2階から3階へと誘う階段とトップライト 裏庭に続く開放的なバスルーム 中にある人も「宙に浮く」感覚 創られた宇宙の中を遊泳するように歩く これだけを聞くと、なあんだと思う人もいるでしょうが、驚くのは2階のリビングの天井の高さとその拡散していくイメージのすごさ! 見上げているだけで吸い込まれそうになるような広がりがあります。まるでプラネタリウムの中にいるような感覚とでも言いましょうか。白い壁と天井高が、これほどまでに見る人を圧倒するものとは思いもしませんでした。それはひとつの「浮遊感」でもあります。 南側から北側の個室と3階の主寝室をのぞむ 先に「宙に浮く」感覚と言ったのは、このことなわけです。そこには星空から吊り下げられた、スペースのわりには小さな白熱灯があり、それが星のかけらのように光を放ちます。きっと、夜などはもっと幻想的な世界を見せてくれるのでしょうね。その意味では、リビングはひとつの宇宙。家族たちはここに集まり、そこからおのおののサテライト(部屋)へと戻っていくといった感じでしょうか。 3階からリビングを見おろす、この高さはどうだ 横浜の「大窓の家」もそうでしたが、手塚さんの作品は総じて、住んでからのそこでの生活イメージがとても膨らむ住宅建築と言えそうです。ただ、横浜の家のテーマが外に向かっての「開放」だったのに対し、弦巻のほうは内に向かっての開放といった違いはありますが…。いずれにしても、この家に内包された「宇宙」は、住むもののイマジネーションをどんどん喚起するような、ある種のパワーというか「働きかけ」を持ったもののように思いました。 階段上のトップライトからは本物の宇宙が… ■設 計:手塚建築研究所/手塚貴晴+手塚由比 担当/高木昭良、原田将史 http://www.tezuka-arch.com/japanese/ 池田昌弘建築研究所/池田昌弘 担当/大野博史、鈴木崇、鈴木崇志 光環境計画/角館政英 担当/内藤真理子 http://www.bonbori.com/j_t.htm ■施 工 :株式会社前川建設 ●構 造 :鉄骨造(一部RC造)地上3階建て ●建築面積:82.65m2 ●延床面積:159.39m2 手塚さんのその他の作品は↓ 柱のない開放空間 メガホンハウス 大窓の家 ※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。