建築家・設計事務所/建築家住宅の実例

建築家が設計した建て売り住宅 納谷学+新さんの学芸大の家(2ページ目)

納谷学+新さん(納谷建築設計事務所)がディペロッパーと組んで東横線学芸大学につくった建売り住宅を見学しました。2階の玄関から入って地下のような1階に降りていくという家、どんな人が買われるのでしょうか?

執筆者:坂本 徹也

屈折した天井が空間の伸び上がりを演出

いったん縮んで、また伸び上がる天井

キッチンの先には、何もない空間が広がっています。ここはあえていえばダイニング+リビングなのですが、用途は自由。ただただ広い空間です。白で統一され、壁と一帯になった天井が途中で屈折しているためか、不思議な広がりが感じられます。また、東側の壁に付けられた収納部の上に間接照明が使われていて、その反射光なども空間の広がりを印象づけるのに一役買っているようです。ただ、この壁は大きなスクリーンにもなりますから、何もない状態に戻したいという建て主の要望があれば応えるということでしょう。

 壁収納を取ると大きなスクリーンとしても使える

大きく取った道路側の開口部はひとつだけ、あとは帯状にいくつか小窓が開けられています。しかしながら明るさも通風も十分で申し分ありません。都心にあってこの広さ、開放感は得がたいものといえるでしょう。

まるで一幅の絵を見るような南面の大窓

さらにこの上には隣の公園の大樹を望める屋上デッキが付けられるそうです。テレビドラマなどを見ると、多くの場合、リビングがソファーや家具に占拠されていて、日本の家はほんとにせせこましいな~と思わせられますが、この空間にはそんな既成の生活空間というものへのアンチテーゼすら感じます。

納谷兄弟の次なる挑戦が楽しみ

オープンで使いやすそうなバスルーム&パウダールーム

さて、階下つまり1階に降りていくと、そこには水回りと、階段を挟む形で3つの小部屋が並んでいます。こちらは上階のパブリックな空間に対し、プライベートな安らぎと眠りの空間ということですね。いったん上がってから下がる形になるので、感覚的になんだか地下にいるかのよう。船でいえば、水に沈んだ部分というのでしょうか……。それだけに外部からはしっかり守られているという安心感があります。いまの都心は、10年前にくらべてずいぶん物騒になりましたから、こうした配慮はこれからの住宅に「必要とされる」要素かもしれません。

 
3つの小部屋が並列に並ぶ、まるで地下にいるかのよう

欲をいえば、3つの小部屋にそれぞれ違った「個性」があってもよかったのではと思うのですが、このあたりはやはり建て売りを意識したときの限界でしょうか。実在する家族なら、それぞれに趣味・嗜好があり、「こうしたい」というニーズがあって、それがインテリアにも反映されるわけですが、ここにはそうした生きた人間の主張がない。いや、建て売りにはそうしたものがあってはならないということですね。ともあれ、納谷兄弟の新しい挑戦、次なる計画が楽しみなことです。

設計監理:納谷学+納谷新/納谷建築設計事務所
構 造 :木造在来工法、一部鉄骨・RC造、地上2階建て

延床面積:120.91m2(36.6坪)
 1階面積:50.88m2(15.4坪)
 2階面積:70.03m2(21.2坪)

納谷兄弟の他の作品はこちら↓
 納谷学・新さんの多摩川の家
 ホチキスのようなV字型住宅「調布の家」
 納谷兄弟の中野プロジェクト
 納谷学・新さんの急斜面に建つ家

  • 前のページへ
  • 1
  • 2
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます