建築家・設計事務所/建築家住宅の実例

デザイナーズ住宅区が玉川台に出現!

納谷兄弟、若松均、みかんぐみ、石黒由紀といえば、まさに今が旬といえる新進建築家たち。そんな最先端にいる人たちが結集したデザイナーズ住宅「意匠街」が東急新玉川線の用賀に生まれました

執筆者:坂本 徹也

ついに実現した建築家4人のコラボレート

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建築家4人のデザインの競演が見られる「意匠街」

納谷兄弟(納谷建築設計事務所)、若松均(若松均建築設計事務所)、みかんぐみ、石黒由紀(石黒由紀建築設計事務所)といえば、まさに今が旬といえる気鋭の建築家たち。そんな最先端の建築家たちが結集したデザイナーズ建て売り住宅「意匠街」が世田谷の玉川台に生まれました。
企画したのは東京組とその協力設計事務所40社で構成される「設計集団プラス」、施工は株式会社佐藤秀というこのプロジェクト。話には上ってもなかなか実現できない複数の建築家によるコラボレーションですが、ここにきてようやくこうした企画が実現するようになったのは、じつに喜ばしいことです。

場所は、東急新玉川線の用賀駅から徒歩5分。緑に囲まれた閑静な住宅街の一画に、まるで建築家による住宅展示場のような恰好で4軒が並ぶ「意匠街」はあります。それは大きな古い住宅一戸を壊して、いかにも安普請な建て売り4軒が建ってしまう現在の都心の悲劇的状況とは違い、あきらかに意匠の競演ともいうべき“意図された空間”になっていました
個人的な意見としては、一人の建築家によってデザインされた、統一性のある街区のほうが都市計画としては好ましい気もしますが、そうすると一軒一軒にかけるパワーが制限されてしまうのと、設計期間とコスト(売値)とが合わない話になってしまうのでしょう。それになんといっても、気鋭の建築家の“作品”が一堂に会すことのおもしろさや興奮がここにはありますよね。
また、ほぼ同じ敷地面積、同じベッドルーム数(夫婦+子供orお年寄り)、クルマの数など、同じ条件下で4人の建築家たちがどう違うプランを練り上げたかという点も見物です。



納谷兄弟の4つのBOX

4つのBOXが重なりあう納谷兄弟の作品 最初に見たのは、納谷兄弟の白いBOX4つを積み重ねた家。延床面積は、駐車場を除けば約100平米で、「意匠街」にあっては一番小さな家になるそうです。
白い4つのBOXが微妙にズレながら重なりあって、それがこの家に豊かな表情を与えています。また、よく見れば同じ白で統一されているものの、木のBOXが間に挟まれていたりして、そうしたさりげない質感の変化も楽しい。木のBOX(1階)は木のバルコニーに接続されているので、素材感の繋がりということでしょうか。道路側は北向きのためかまったく開口部がなく、真っ白なBOXが3つ、無造作に積み上げられたように見えるところもおもしろいですねー。

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階段を上ってエントランスへ、右奥は別のデザイナーズ住宅

エントランスには階段のアプローチがあり、数歩歩いてから家に入るというワクワク感があります。
一歩室内に入るとそこは大きな木の床のリビング。やや段差があってキッチン+ダイニングになっています。この微妙な段差は、2つのBOXが噛み合う位置にできたものということですね(ダイニング側が高い)。この段差は、ダイニングに接続するバルコニーをやや高くして日当たりを確保するためのもののようです。リビングとダイニングは違うBOXにあるんだよということを強調するため、床材の色を変えるなどの工夫がされています。視覚的にはその境目がまるで深さで色が変わる海面のよう。こんな遊びも建て売りだからこそできる自由度の広さなのでしょう。

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開口部にベンチのあるリビング、壁が広い

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地下への階段からリビング+ダイニングを望む

リビングには、3つの階段がありました。ひとつは地下に降りるためのもの、もうひとつは2階に上がるためのもの、最後は小さな中庭に出るためのものです。地下に降りてみますと、駐車場と壁で仕切られた細長い廊下の向こうに、ゆったりとしたガラス張りのバスルームがありました。
ここは道路面なのですが、壁の向こうには盛り土をしてつくられた中庭があるので、立派な地下室です。しかしながら、浴槽から見える白壁のドライエリアとガラスの間仕切りのせいで、地下の閉塞感をまったく感じさせません。そして、さきほどの細長い廊下の先は階段になっていて、ここからも中庭に出ることができます。

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リビングからダイニングを見る、海のように床の色が変化

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ダイニングからの眺め、左手はウッドのバルコニー

住の4つのエレメントをBOXで表現

リビングにあるもうひとつの階段を登って2階に上がると、そこはバルコニーを共有する小さな寝室と大きな主寝室になっています。主寝室の特徴は、自由にポコポコと開けたような不連続な開口部と、壁面にこれまた自由につくられた飾り棚でしょう。この配置じたい、アートしているような印象ですねー。絵画やポートレートを置けばそのままギャラリーになるような…。そんなセンスを理解できる都会派の住まい手なら、毎日が楽しくなってしまうでしょうね。
考えてみれば、住まいとは「くつろぎの間」「食の間」「水(入浴)の間」「眠りの間」の4つのエレメントから構成されるもの。納谷さんは、ここでその原点をもう一度再現されたような気がしました。

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アーティスティックな寝室とでもいいましょうか

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何を飾るかで部屋の空気も変わりそう

設計監理:納谷学+新/納谷建築設計事務所
構造設計:かい構造設計
施 工 :株式会社佐藤秀

構 造 :地下RC造+地上鉄骨造、地下1階、地上2階
敷地面積:106.09m2(32.09坪)
建築面積:53.03m2(16.04坪)
延床面積:130.31m2(39.41坪)

納谷兄弟の他の作品はこちら↓
 納谷学+新さんの千歳烏山の家
 納谷学・新さんの武蔵小杉の家
 納谷学・新さんの学芸大学の家
 納谷学・新さんの多摩川の家
 ホチキスのようなV字型住宅「調布の家」
 納谷兄弟の中野プロジェクト
 納谷学・新さんの急斜面に建つ家

続いて、若松均さんの作品をご紹介します

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