ウォールナット基調の室内に土佐漆喰の壁
2階に上がると、今度は素材に木とスチールが加わってきます。振り分けられた室内は、道路面がとても木造とは思えないほどの高さ・広さのあるリビング、もう一方がキッチン+ダイニングになっていました。
キッチン+ダイニングは、廊下(木)と階段(スチール)とテラス(エキスパンドメタル+ガラス)が空間的に繋がっていて、視界もよく明るい。キッチンの引き戸に使われているのは木目の美しいタモ材です。
いっぽうのリビングはというと、こちらはウォールナット基調の室内にメープルのフローリング、土佐漆喰の壁、そして窓には木製ブラインドという組み合わせ。あたたかみがあって、くつろげそうな空間になっていました。露出した構造材を木の色に塗るなどの工夫がとても生きてます。
家族の集まるソファーの後ろには、どっしりしたウッドのデスクが置かれていましたが、ご主人はここで持ち帰った仕事をされることもあるとか。これだけ広ければ、それもストレスなくできるでしょう。それにしてもこの広さ! まるでアメリカのドラマを見ているような感覚ですねー。
何十年の時を経て生き続ける素材のよさと職人技
続いて3階はプライベート空間。道路側には、子どもなら数人が泊まれるロフト付き、ミニリビング付きの子ども部屋があります。ここはきびしい斜線制限のためかなりきつい斜度の壁面(天井の一部)になっていますが、森山さんはこれに丹念にメープル材を張って、じつに手触りのいい空間に生まれ変わらせました。その仕上げの見事さはまさに特筆もの。職人さんたちのきめの細かい手作業と建築家の仕上がりへのこだわりが伝わってきます。こんな場所で育つ子どもは、きっと素直で頭の柔軟な子になることでしょう。
テラスを挟んでもういっぽうの部屋は夫婦の寝室。天井が高くてプライバシーがしっかり確保された快適なベッドルームになっていました。
「アルス・ノヴァでは、マニエリスティック・マテリアリズム(Manneristic Materialism)というコンセプトを大切にしていて、素材の放つ質感や素材固有の表現形式を能動的に捉え、それを構造や結合処理などに美しく生かしていきたいと思ってるんです。この遊々庵では建て主さんが賛同いただけたこともあって、それをフルに発揮させることができました。ある意味、とても贅沢な造りですが、素材のよさや仕上げへのこだわりは何十年もしっかり生き続けるものだと思いますよ」(森山さん)
素材を大切にする家づくりもまた、建築家とならではの愉しみといえるでしょうね。森山さんは、設計コンペなどで有名なサイト建築Webの運営にも関わっている人。建築家との家づくりを今後もますますおもしろくしていってくれるものと期待しています。
■設計監理:アルス・ノヴァ/森山高至、宮副ただし
■構造設計:アトリエ・ラ・クレ、吉田一成構造設計室
■施工 :小島工務店
●敷地面積:95.64m2(28.93坪)
●建築面積:57.10m2(17.27坪)
●158.80m2(48.04坪)
●構 造 :木造+RC造、地上3階建て
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藤田征樹さんの南落合の家