伸び上がりと波紋のような広がり
収納を隔てて廊下の裏側にある階段を使って2階に上がると、そこはいきなり吹き抜けのある大空間。さらにこの階には、駐車場の上に張り出したライブラリーと呼ばれるスペースがあり、上だけではなく横にも斜めにも広がっていく演出が施されています。
伸び上がりと波紋のような横への広がり----実際の建物の何倍もの容積に感じられるこれほどの仕掛けにはそうそうお目にかかれるものではありません。
2階の床面の形状はちょうど凸型をしていて、その南北両端にキッチンとバスルームがあり、中央の突出部が書架のあるライブラリー、そしてリビング+ダイニングという構成です。とはいえ、リビングとライブラリーの間には境界がなく、リビングは3階に吹き抜けているので、ここにはまるでひとつのホールのような一体感があり、家族たちがいやおうなく集まってくるような求心力を生み出していました。
さらにいえば、ここには宙に浮くような恰好で収納が設えられているのですが、これがなかなかいい! 真っ白な空間に木の素材感が組み合わさって、硬質な空間に柔らかさを演出しています。
視野を広く頭を柔軟にする家
続いて3階に上がると、こちらは中央の吹き抜けを渡るブリッジで結ばれた、仕切りのない2つの個室(子ども部屋)から成っています。さらにブリッジからは、ちょうどライブラリーの屋上にあたるバルコニーに出られるようになっており、これらの空間がまったく一つのものとして視界に入ってきます。う~ん、これはなかなか爽快な空間の繋がり方ですねー。子ども部屋の手摺りがやけに細いスチールなのでちょっと不安定な感じがしますが、これは家具や机などが入ってくることでやがて解消されていくことでしょう。
それにしてもこの階も北面すべてがガラス張りの開口部で、さらに斜度がついている。素晴らしい開放感はいいとしても外気温の影響が心配されるところです。「窓にはすべてペアガラスを使ってあります。また、夏は南北に風が通りますし、冬はあたたかい空気が下から登ってきますから、それほど心配することはないと思っています」(駒田由香さん)
これだけのガラス面をすべてペアガラスにするには少し決断力が要るように思いますが、そうしたことでここには類を見ないほどの視界の広がりが生まれたことはたしか。「北斜め窓の家」で育った子どもたちが、視野の広い柔軟な頭の持ち主になることは間違いなさそうです。
■設計監理:駒田剛司+駒田由香/駒田建築設計事務所
■構造設計:山辺構造設計事務所
■施工 :栄港建設
●敷地面積:100.16m2
●建築面積:48.68m2
●延床面積:99.84m2
●構 造 :鉄骨造・3階建て