その言葉が持つ響き、感じ方は人それぞれだが、ここ日本では古く明治初期や、江戸時代の大奥までさかのぼる、古の記憶として認識している人がほとんどだろう。しかし世界を見渡すと、まだこの制度を認めている国が存在する。
中でも多くの国が古くからの伝統を受け継いでいるアフリカでは、一夫多妻制を制度として施行している国が少なくない。今年6月にサッカー、ワールドカップを開幕する南アフリカ共和国のズマ大統領(67)は年が明けてすぐの1月4日、5回目の結婚をしている。死別や離婚を経て、今回の結婚で3人目の妻を迎えたズマ大統領。もちろん認められた結婚だが、この結婚に対し世論は二分されているという。
女性蔑視、性感染症の拡大防止が反対論者の主張だが、この一夫多妻制、現代社会においてどのような位置づけであり、どのような問題を抱えているのだろうか。オールアバウト「結婚生活」ガイドの二松まゆみ氏は制度の問題ではなく、心が受け付けないと訴える。
「一夫多妻制が制度として認められている国では、複数の妻に対し、夫が平等に扶養する義務を負います。これは金銭面や時間に余裕がある男性なら可能かもしれませんが、果たして平等に愛することができるでしょうか? みんなと同じ回数セックスできるでしょうか? 誰しも好き嫌いは少なからず存在し、それが結婚生活となれば隠すことは難しいでしょう。
また女性は他人と自分を比較しやすい性質があります。『隣の奥さんが~』などと、自身の置かれた環境をほかの女性と比べることで満足感を得たり、不満を溜めたりするのです。そんな女性が複数の妻の一人として生活することは非常に難しいことで、そこで満足な愛を受けられなければ寂しさを感じ、浮気をしたり悪口を言ったり、家庭が壊れ、社会的な地位を失うといったシナリオも考えられます。その観点からも、今回南アフリカでも問題となっている性感染症の広がりも、ないとは言えません」
ふと自分たちの生活に落とし込んで考えるてみると、まさしくおっしゃるとおり。この精神面、気持ちの問題こそ、乗り越えられない問題だと、二松氏は続ける。
「愛情の平等が難しい以上、割り切った関係、愛情以外で均衡を保つことができればあり得るとは思います。お金であったり、物であったり、それを愛情の代わりと受け止めることが出来れば、ですが…」
一夫多妻制という婚姻関係を成り立たす要件が“割り切った関係”とは、なんとも皮肉なものだ。