日本の芸能界ではかつて、結婚式のウェディングケーキの高さを競うことが流行したことがありました。このウェディングケーキの高さは、なんと紀元前4000年後半にまでさかのぼることができるのです。
高い丘に神を祀る習慣があったこの時代、バビロニア王国に建てられたのがあの有名なバビロンの塔。人々は天上への憧れを高い塔に託したのでした。この思想がウエデイングケーキにも引き継がれていると言われます。
フランスでは大型の背の高いお菓子のことをピエス・モンテといいます。このピエス・モンテに力を注いだのが、不世出のパティシェと呼ばれるアントナン・カレーム(1784~1833)。彼は優れた建造物や美術品を参考に、さまざまなピエス・モンテを考案。結婚式はもとより、宗教上のセレモニーなどに使われました。
さて、フランスで結婚式に欠かせないケーキといえばクロカンブッシュです。これは小さなシューを高く積み上げ、飴をかけて固めたもの。披露パーティーで列席者とともにシューを外して食べます。
女王のロイヤルウェディングを飾った3段重ねケーキ
一方、18世紀末のイギリスでも背の高いケーキが登場して話題を呼びました。ロンドンの菓子職人であったウィリアム・リッチ(1755~1811)は店先から見えるセント・ブライド教会の尖塔をヒントに、背の高いケーキを作り上げたのです。
このケーキが一躍有名になるのは彼の死後。1840年にヴィクトリア女王とアルバート公の結婚式の際、彼が考案した手法によって3段重ねのケーキが作られ、ロイヤルウェディングに華を添えたのでした。諸外国から運ばれた砂糖やフルーツ、ブランデーをふんだんに使ったこのケーキは、当時としては限りなく贅沢なものでした。
以来、イギリスでは結婚式には3段重ねのウェディングケーキを出すのが定番となりました。なお、3段重ねの一番下は披露宴の列席者に、中段は当日列席できなかった遠方の方々に食べていただき、最上段は結婚1周年か赤ちゃんが生まれるまで大切に保管されます。
このケーキはドライフルーツやブランデーをたっぷりと使ったうえ、表面をシュガーペーストで覆っているため、長期保存が可能なのです。今でも、イギリスでウェディングケーキといえば、このシュガーケーキと相場は決まっているようです。
ちなみに、ウェディングケーキにはバラの花の飾りと唐草模様の飾りがつきもの。これは、バラ(とくに白バラ)が純潔を象徴するものだから。また、唐草模様は上へ上へと伸びていく様が、ふたりや両家の繁栄を象徴しているからです。
参考文献:『菓子の文化史』締木信太郎(光琳書院/1971)、『洋菓子の世界史』吉田菊次郎(製菓実験社/1986)
ウェディングケーキの由来のお話、いかがでしたか? 日本のウェディングケーキのエピソードは「ウエディングケーキ初めて物語2」をご覧下さい。
★また、ウェディングケーキを使った演出については「Wケーキで盛り上がろう!」をご参考に!