博多のとある焼酎バー。大分産の麦焼酎だといってこのお酒を出されて、いやはや驚いた。だって、飲んだあと味があまりにも香ばしく、そう、まるでなつかしの麦チョコみたいなんだもの。麦焼酎ってこんなに個性があったかしらん・・・。
で、麦焼酎だ。
だいたい、大分の麦焼酎は「いいちこ」や「吉四六」に代表されるように、あっさりすっきり飲みやすいタイプで、全国どこでも違和感なしに受け入れられているのだ。癖のない仕上がりの理由は米麹を使用しているのと減圧蒸留をするから。
だから「焼酎は臭い。けど、麦は大丈夫」と言う声を結構聞く。
だけどこの『兼八』はいい意味でその逆だった。
まず香りがほんのりとブリオッシュのように甘く、味わいはなめらかで柔らかいコクが。そして何より、あと味が炒ったアーモンドやフランスパンのトーストのように・・・、もう率直に焦がした麦や麦チョコの風味がなが~くなが~く残るのだ。
その香ばしさたるや感動もの。おまけにちょっと懐かしい。
どうやら他の麦焼酎と違って、麹も麦を使用しているらしい。いわゆる「むぎむぎ」系。さらに常圧蒸留をする。それも自家製の蒸留器を使用しているのだとか。自家製ですよ。うう~ん、どんなものなんだろう。原料の「はだか麦」というのもちょっと気になる。
素朴な文字で『焼酎屋 兼八』と書かれたラベルには、製造所「四ツ谷酒造場」のあとに四ツ谷シゲ子さんと、また裏ラベルには杜氏四ツ谷芳文さんと名前があり、どうみても家族経営の小さな手造り蒸留所という印象をうける。創業は1919年と歴史もある。焼酎バーで紹介してもらったものだけど、なんだか、知られざる銘酒を発見したような気分でかなりうれしい。
それに、あっさり系の麦焼酎の印象がぐっと変わっってしまった。
なんという香ばしさ。とはいえ、食事の邪魔をするほど強くはない。実にいいバランス。この風味を生かすには、小魚の一夜干しを炙ったものや、手羽先のごま揚げ、なんてどうだろう。もしくは、この『兼八』のふるさと大分県宇佐には、なにかぴったりの美味しい食材があるかも知れない。自家製蒸留器というのを見学しに、一度、訪ねてみたいものだなあ。
そんなことを考えながら東京に帰り、早速自分のお店(ワインバーですが、焼酎もそろえています。【大人が楽しめるバー】参照してね)で仕入れようとお酒屋さんに問い合わせたところ、『原酒兼八』というのがあることも知った。
最近発売されたものらしく、真中がグッとしぼられたような四角い透明ボトルで、意外に(というのは失礼ではあるが)スタイリッシュ。味わいはアルコール度数二十五%の「兼八」を凝縮させたようなタイプで度数は四十二%。麦の香ばしさと甘味ををより強く楽しめるものだ。こちらは、食後にオン・ザ・ロックスにしてモルトウィスキーの気分でゆっくりやりたい。
この不思議なくらいの香ばし&なつかし風味に、しばらくハマりそうだ。
ご興味のある方は、ぜひ、ワインバー・アルファ(03-5568-1118)で。
●四ツ谷酒造場 大分県宇佐市大字長洲四130
『兼八』 720ml 940円
『原酒兼八』 720ml 2400円
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