水にもこだわる老舗のインド宮廷料理店
ワタシが本格的と謳うインド料理店に足を運ぶようになったのは、東京にでてきてから。かれこれ20年以上前の話である。当時インド料理といえば、北インドの宮廷料理を中心に提供する「サムラート」と「ラージマハール」が主流。ほんのり甘みのあるナンに、タンドリーチキン、生クリームや油をふんだんにつかったリッチなカレーは、喫茶店や家庭のカレーに慣れていたワタシにとっては、とにかく衝撃的でよく足を運んだものだった。なかでも「ラージマハール」は、店内にタイル画が飾られていたり、調度品が豪華で、イスやソファはふっかふか。両親や友人が上京する際には、店内に異国情緒があり、優雅な気分にまでさせてくれるこのラージマハールに連れて行ったものだった。以前、渋谷の東急ハンズ近くに勤務していたこともあり、特に渋谷店にはよくお世話になりました。
ワタシがこの店でなによりも気に入っていたのは、贅をつくした空間やスパイスをふんだんに使った料理以上に、料理の前に出てくるお水。ラージマハールではこのお水にまで気を遣い、納得のいくものを出していたのだ。(ワタシ、昔から結構気になるんですよ、お水には。料理の前にでてくるお水ひとつで、その後の料理のおいしさが変わってくるように感じられるのですもの。)
その後、そんなラージマハールやサムラートに続けと、インド料理店が雨後のタケノコのようににょきにょきと出現し、行きたいお店が増えたということもあるのだが、当時からバターや油をたっぷりと使った料理を食べると、ワタシの胃は悲鳴をあげ、休息を求めることもあり、この店の料理はしっかりと作られているとわかっていながらも、しばらく足が遠のいてしまった。
そうこうするうちに、東京の話題スポットである東京駅近くの「新丸ビル」や銀座の「マロニエゲート」にもオープンさせるなど、新たな切り口で店舗展開していくラージマハール。この店のことを語るには、当時から足しげく通う常連の皆さまにいささか失礼だが、今回ご紹介するのは、このラージマハールグループを辞したホールスタッフが、当時このグループで腕をふるっていた料理人とともに独立したお店。2007年5月15日にオープンした「Priya(プリヤ)」のことである。